前回の記事では、
FIRE後のリアル──幸福・暇・役割・後悔リスク
について整理した。
ここまで来ると、FIREが「夢」ではなく、
少しずつ「現実」の選択肢として見えてくる。
すると次に出てくるのは、とても現実的な質問だと思う。
「FIRE前って、何を準備しておけばいいの?」
今日はこれを、
「やっておいて良かった」+「やらないと危ない」
という視点で整理していく。
結論
準備は “お金” だけじゃ足りない。
生活・心・人生設計までセットで整えて、
初めてFIREは安定する。
① お金の準備 ─ これは基礎。でも「数字だけ」で終わらせない
✔ 年間生活費を「現実の数字」で把握しておく
まずはこれが土台になる。
感覚ではなく、
自分の家計に基づいた“リアルな数字”を持っておく。
- 固定費はいくら?
- 変動費はいくら?
- 「最低限」でいくら?
- 「普通に幸せ」でいくら?
特に大事なのが、
- 最低限ライン
- 快適ライン(“普通に幸せ”ライン)
この2本のラインを持っている人は、かなり強い。
✔ FIRE用の資産設計をしておく
単に「◯◯円あればFIREできるらしい」という話ではなく、
- 取り崩しルール
- キャッシュポジション(現金比率)
- 債券の役割
こういった“設計図”レベルまで落としておく。
このあたりは、このシリーズ前半で詳しく触れてきた通り。
「なんとなくイケるっしょ」ではなく、
「この設計なら戦える」と言える状態にしておきたい。
✔ 収入ゼロの期間をシミュレーションしておく
FIRE後の数年間、
あえて「収入ゼロ」を前提にシミュレーションしてみる。
- もし想定より資産が減ったら?
- もし想定より生活費が増えたら?
- もし「やっぱり仕事したくなったら」?
こういう “もしも” を考えておくほど、
FIRE後の安心度は上がっていく。
② 生活の準備 ─ 「暮らしの設計」を甘く見ない
✔ 生活リズムを整える
FIRE後は、会社に「生活を管理されない」生活になる。
- 何時に起きる?
- 週のリズムはどうする?
- 運動の時間は?
- 家事の役割分担は?
「自由=ノールール」ではない。
自分でルールを作れるかどうかが大事になる。
✔ 楽しみを“後回しにしない”
ありがちな失敗がこれ。
「FIREしたらやろう」を増やしすぎること。
- 旅行
- 趣味
- 勉強
- 家族時間
こういうものは、
「FIREしてから」ではなく、少しずつもう始めておいた方がいい。
“FIREしてから考える”は、正直ちょっと遅い。
✔ 社会とのつながりを一度整理しておく
仕事を辞めると、思った以上に人間関係が減る。
- 仕事仲間
- 友人
- コミュニティ
ここで一度、こんな問いを持っておきたい。
- 誰と関係を続けたい?
- どんな人と関わり続けたい?
これは、意識しておくだけでも価値がある整理だと思う。
③ 心の準備 ─ 実はここが一番大事
✔ “肩書きなしの自分” を受け入れる準備
会社の役職、職業名、立場……
こういった“看板”が、ある日ふっと外れる。
「ただの自分として生きる」
これは自由であり、
同時にかなりの負荷でもある。
✔ 「完璧なFIRE」を捨てる
FIREは、一度決めたら後戻りできない「到達点」ではない。
- 迷っていい
- 方向転換していい
- セミリタイアに戻ってもいい
FIREは「人生のルート変更」くらいの感覚でいた方が、むしろ安定する。
✔ 「今が幸せじゃないと、FIREしても幸せにはならない」
少し厳しいけれど、かなり現実的な話。
- 今の生活にすべて不満
- 仕事がすべて悪
- 人生の不幸の原因=会社
こういう状態だと、
FIREしても“思ったほど幸せになれない”ことが多い。
逆に、
「今の中にも、ちゃんと幸せを見つけられる人」
ほど、FIRE後の幸福度は高くなりやすいと感じている。
僕の感覚
僕の感覚では、FIREの成功は
「資産額」ではなく、“準備の質”で決まる。
- 数字だけのFIREは折れやすい
- 感情だけのFIREは危うい
- 生活設計だけのFIREは持たない
大事なのは、この3つを
バランスよく整えていくことだと思っている。
まとめ
- FIRE前の準備は、お金だけじゃ足りない
- 生活リズムや暮らし方の設計が重要
- 心の準備が、実はいちばん効く
- 完璧じゃなくていい。でも「考えた形跡」は必要
FIREは、
“逃げる準備”じゃなくて、
“これからちゃんと生きる準備”。
次回予告(第16回)
次回は、
FIREの「お金以外のリスク」とどう付き合うか
医療、家族、ライフイベント、価値観の変化など──
長期視点のリスク設計について整理していく予定。
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