前回の記事では、
年ごとの「資産 × 収入 × 支出」を1枚の表にすることと、
楽観・標準・悲観の3パターンを作ること
について整理した。
ここまで来ると、次に出てくる感覚はだいたいこうだと思う。
でもさ…どうせこの通りにはいかないよね?
そう、その通りで。
シミュレーションはほぼ確実にズレる。
この記事では、
「計画どおりに行かない前提」でどうやってFIREを進めるか、
どのタイミングで、どう見直せばいいかを整理する。
結論:計画は「当てる」ためではなく、「ズレたときの地図」にする
FIRE計画は「当てにいくもの」じゃない。
ズレたときに“軌道修正の判断がしやすくなる地図”。
- ズレること自体は問題ではない
- ズレたときにどう動けるかが大事
- そのために、あらかじめ“調整のルール”を決めておく
シミュレーションがズレるのは“普通”のこと
ざっくりでも表を作ってみると、1〜2年でこういうズレが出やすい。
- 給料が思ったより上がらなかった/逆に上がりすぎた
- 転職・配置転換で収入構造が変わった
- 子どもの教育費が想定より早く膨らんだ
- 投資リターンが「標準ケース」と大きく違った
- そもそも自分の価値観が変わった
ポイントは、
「ズレた=失敗」ではなく、「前提がアップデートされた」だけ
と捉えておくこと。
よくハマる“メンタルの罠”
罠① 「やっぱり全部やり直しだ…」思考
- 少しズレると、計画を全否定したくなる
- 資産推移が計画より下だと「自分には無理」と感じる
こうなると、シミュレーションを見るのがつらくなり、放置コースになりやすい。
罠② 「計画どおりだから、もう大丈夫でしょ」思考
- 思ったより資産が増える
- グラフが計画より上を推移している
- =「もう放っておいても平気」と油断しがち
この状態で、大きな環境変化(リストラ・病気・税制変更)が来ると一気に崩れやすい。
シミュレーションの“使い方ルール”を決めておく
① 見直すタイミングを決める
感情で見直すとブレやすいので、
事前に「いつ見るか」をルール化しておく。
- 年に1回(誕生月 or 年末)
- ボーナス後に1回
- 転職・出産・引っ越しなど、大きなイベントがあったとき
「何か不安になったから」ではなく、
「このタイミングで棚卸しする」と決めておく。
② 見るポイントを3つくらいに絞る
全部を細かくチェックしようとすると疲れるので、見るポイントを絞る。
- 期末資産が「標準ケース」からどのくらい外れているか
- 年間支出が想定よりどれくらいズレているか
- 仕事・働き方の満足度(10点満点で自己評価)
数字と同じくらい、「心の状態」も一緒に見ておくイメージ。
想定より資産が“増えた”ときの扱い方
プラス方向のズレが出たときほど、落ち着いて扱いたい。
✔ 追加でやれる選択肢の例
- セミリタイア時期を少し前倒し候補に入れてみる
- 仕事の負荷を少し下げる選択肢(部署異動・時短など)を検討する
- 教育・自己投資に回す枠を少し増やす
- 余剰分をリスク低めの資産に退避しておく
余裕が出たときに、
「さらにFIREを早めるため」だけに全部突っ込むより、
生活の満足度を少し上げる使い方を混ぜる方がバランスがいい。
想定より資産が“減った”ときの扱い方
ステップ1:原因をざっくり分解する
- 市場要因(株価下落など)なのか
- 自分の支出増なのか
- 収入減なのか
ここをざっくり切り分けるだけで、「何をいじればいいか」が見えやすくなる。
ステップ2:事前に“調整レシピ”を決めておく
「もし資産が●%下振れたら」という前提で、
やることリストをあらかじめ決めておく。
- 標準ケースより▲10% → 固定費中心に生活費を見直す/セミリタイア時期を1〜2年後ろにずらす候補に入れる
- ▲20%以上 → FIREラインを一時的に引き上げる/副業や働き方の見直しを検討/株式比率を少し落としてリスク調整
こういう“事前の調整レシピ”があると、
落ち込む時間より「対策する時間」の方が増える。
「もう行けるかな?」と思ったときの判断軸
シミュレーションが進んでくると、心のどこかでこう思う瞬間が来る。
もうセミリタイアしてもいいかな?
そのときに見るのは、資産額だけだともったいない。
✔ 見ておきたい3つの軸
- 数字: 標準ケースで見て「〇歳以降は資産が減りすぎない」ラインに乗っているか/生活費2〜3年分の現金クッションがあるか
- 暮らし: 今の生活費が「ギリギリ」ではなく「現実的に回る」レベルか/無理な節約に寄りすぎていないか
- 心: 仕事を減らしたときに何をしたいかが、ざっくり言葉にできているか/不安より「やってみたい気持ち」が少しだけ上回っているか
この3つを見たうえで、
「不安もあるけど、トライする価値はあるよね」と思えるかどうかが、ひとつの目安になる。
僕の感覚
FIREシミュレーションは「未来を固定するツール」ではなく、
揺れたときに戻れる“基準点”を作るためのもの。
計画は必ずズレる。
価値観も変わる。家族の状況も変わる。
それでも、年1〜2回“地図”の前に立ち返って、
ズレた分だけルートを引き直す。
この繰り返しができていれば、FIREは
「当たった・外れた」ではなく、
自分たちで舵を取り続けるプロジェクトになる。
まとめ
- シミュレーションはほぼ確実にズレる前提でOK
- 大事なのは「ズレたときの軌道修正ルール」を決めておくこと
- 見直しタイミングは年1〜2回+大きなイベント時に設定
- 資産が増えたときは、生活の満足度アップにも少し使う
- 資産が減ったときは原因を分解し、「●%下振れでこう動く」という事前レシピで対応
- セミリタイア判断は「数字・暮らし・心」の3軸で見る
次回は、「FIRE判定ラインをどう決めるか」をテーマに、
4%ルールだけに頼らない、自分なりのライン設定の考え方について整理する予定。
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