前回の記事では、
FIRE判定ラインは「資産額」だけで決めない。
「数字 × 生活 × 心 × 家族 × バックアップ」で考える。
という話をした。
ここまでくると、次のような感情が出てくる人も多いと思う。
ラインはなんとなく見えてきた。
でも、いきなり本番FIREは正直こわい…。
その感覚は、とても健全だ。
この記事では、いきなり退職しなくてもできる
「お試しFIRE(プチFIRE)」の考え方と具体例を整理していく。
結論:まずは「時間の主導権」を一時的に取り戻す実験からでいい
FIREは、いきなり本番で試さなくていい。
まずは「時間の主導権を一時的に取り戻す」お試し期間で、
自分との相性を確かめるのが現実的。
- 育休・サバティカル・長期有給は「合法的なFIRE実験場」
- 大事なのは「完璧に過ごすこと」ではなく、「自分の傾向を知ること」
- 合う/合わない・足りない条件を言語化して、本番FIRE計画に反映する
お試しFIRE(プチFIRE)って何?
ざっくり言うと、
「会社の外に自分の1日を出してみる」テスト期間。
- 会社は辞めない(完全FIREにはしない)
- 一時的に「FIRE後っぽい時間の使い方」をしてみる
- 何が心地よくて、何がしんどいのかを“実地で”確認する
こんな形が考えられる
- 育児休業・介護休業をフルに使い、「平日フル在宅+家族時間中心」の生活を試す
- 会社に制度があれば、サバティカル(長期休暇)を取得する
- 有給休暇をまとめて消化し、1〜2カ月の余白期間をつくる
- 転職の合間に、あえてブランク期間を1〜3カ月とる
- 週5勤務 → 週3勤務にして、「平日休み」の感覚を味わう
どれも、いきなり退職せずに
「FIRE後の一部」を先に体験するイメージだ。
お試しFIRE期間で「観察したいこと」5つ
ただ休むだけだと、
楽しかった/微妙だった
で終わってしまう。
せっかくなら、少しだけ“観察モード”で過ごすと学びが増える。
① 1日のリズム
- 何時に起きると調子がいいか?
- 午前/午後/夜、どの時間帯が一番頭が働くか?
- ダラダラしがちな時間帯はどこか?
→ 「FIRE後の自分の最適な1日の型」がうっすら見えてくる。
② お金の感覚
- 外食・買い物が増えたか、減ったか?
- 平日に時間があると、支出はどう変化するか?
- 「お金を使わない楽しみ」をどれだけ見つけられるか?
→ FIRE後の支出イメージの現実度チェックになる。
③ 孤独感・社会とのつながり
- 誰とも話さない日が続くと、しんどいか?
- 逆に「一人時間」がある方が楽か?
- 家族以外と話す場が、どのくらい欲しいか?
→ 「どの程度の社会参加が必要か?」が見えてくる。
④ 家族との距離感
- 一緒にいる時間が増えることで、良くなる部分/圧が増える部分は?
- 家事・育児・役割分担はどう変わるか?
- 「24時間一緒」が心地よいのか、適度な距離が必要なのか?
→ 「理想の家族像」ではなく、「実際の我が家」の最適距離が見えてくる。
⑤ 自然とやりたくなったこと
- 誰にも強制されていないのに、つい手が伸びたことは何か?
- 逆に、「やるつもりだったのにまったく手をつけられなかったこと」は何か?
→ 「FIRE後にやりたいこと」の“本音版リスト”になる。
お試しFIREでやりがちな失敗
① 「完璧な1日」を目指して詰め込みすぎる
- 朝活もする
- 読書もする
- 勉強もする
- 運動もする
- 家族時間も完璧に…
だいたい3日目くらいで燃え尽きる。
お試しFIREは「理想の自分」を証明する場ではなく、
「実際の自分のペース」を知る場。
7割くらいの力感でちょうどいい。
② 何も決めずに、ただダラダラして落ち込む
- なんとなくスマホ
- なんとなく動画
- 気づけば夕方
- 「自分は何をしているんだろう…」と自己嫌悪
これもよくあるパターン。
ポイント:
- 予定をギチギチにはしない
- でも、「1日の軸」を1つか2つだけ決めておく(例:午前は◯◯、午後は自由/毎日30分だけ勉強など)
③ 結果を「向いてる/向いてない」で白黒判定してしまう
ダラけた → 自分はFIREに向いていない!
孤独だった → FIREなんてムリ!
ではなく、
「FIREするなら、こういう工夫が必要そうだな」
という“条件”を見つけるイメージ。
お試しFIRE前に決めておきたい“ゆるい設計”
本番FIREのようなガチガチの設計は不要。
ただ、これくらい決めておくと、かなり有意義になる。
① 期間
- 1週間
- 2週間
- 1カ月
- 育休のうち◯カ月 など
「いつまで続けるのか」を決めておくと、途中でブレにくい。
② テーマ
- 体力とメンタルを立て直す「休む」期間
- 家族との時間を最優先する期間
- 勉強・資格・スキルアップに集中する期間
- やりたいことを「試しに全部触ってみる」期間
何となくでもいいので、「今回のテーマ」を決めておく。
③ お金の上限
- この期間中の生活費はこれくらいまで
- 特別出費はこの枠の中で、などざっくり決めておく
→ 「お金の不安」で頭がいっぱいになるのを防げる。
④ 1週間のリズム
- 平日:◯◯中心
- 週末:家族/友人との時間
- 週に1回は「完全オフの日」を作る など
ざっくり「週間スケジュール」を書いておくと、
1日ごとに迷子になりにくい。
⑤ 振り返り方
- 毎日3行だけ「今日感じたこと」をメモ
- 1週間ごとに「良かったこと/しんどかったこと」を箇条書き
このメモが、後で本番FIREの設計に効いてくる。
お試しFIREの結果をどう活かすか?
お試し期間が終わったら、「合う/合わない」を感覚のままにせず、言葉にしておきたい。
① 「心地よかったことリスト」
- どんな時間の使い方が気持ちよかったか
- どんな人間関係の距離感が楽だったか
- どんな支出の仕方がしっくり来たか
→ これは「FIRE後に守りたいもの」のヒント。
② 「しんどかったことリスト」
- 孤独感なのか?
- 退屈さなのか?
- お金の不安なのか?
- 家族との距離感なのか?
→ ここは「FIRE計画の中で対策するポイント」。
③ 「意外な発見リスト」
- 思ったほど仕事が恋しくなかった/逆にけっこう恋しかった
- 一人時間より、誰かと一緒の時間が欲しかった
- 趣味だと思っていたものが、意外とそこまで燃えなかった
→ こういう「ズレ」は、FIREを考えるうえでとても貴重な材料になる。
僕の感覚
FIREは“机上の計算”だけで決めるには、
ちょっとインパクトが大きすぎる選択。
だからこそ、育休・サバティカル・長期有休・週3勤務など、
「お試しFIRE」を人生のどこかで挟めるとかなり心強い。
完璧なお試し期間じゃなくていい。
むしろ、
ちょっとグダグダしてしまった自分ごと、
ちゃんと見つめ直すくらいが、ちょうどいい。
まとめ
- いきなり本番FIREが怖いのは、むしろ健全
- 育休・サバティカル・長期有休などは“合法的なFIRE実験場”
- お試しFIREでは「リズム・お金・孤独感・家族・自然とやりたくなったこと」を観察
- 「完璧な1日」を目指さず、「自分のペースと傾向を知る」ことが目的
- 期間・テーマ・お金の上限・週間リズム・振り返り方法をゆるく決めておく
- 結果を「向いてる/向いてない」ではなく、「必要な条件」として言語化する
次回は、「会社を辞めなくても、どこまでFIREに近い働き方を作れるか?」をテーマに、
週3勤務・時短・職種チェンジなど“FIRE寄り働き方”の選択肢と考え方を整理する予定。
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