前回の記事では、
FIRE後の「場所の自由」と、移住・二拠点・プチ移住の考え方
について整理した。
場所の自由を考え始めると、ほぼ必ずセットで出てくる不安がある。
「ここで暮らすのはいいとして…本当にこの資産、減らしながら一生もつんだろうか?」という感覚だ。
取り崩したくない。
減るのを見るのが怖い。
むしろ使えなくなる。
この記事では、FIRE後のお金との付き合い方として、
なぜ「減る恐怖」がこんなに強いのか、取り崩し設計の基本、メンタルを守るための“見方・ルール”を整理していく。
結論:目標は「減らさない」ではなく「減っても破綻しない構造」
FIRE後の資産は「減ってもいい前提」で設計する。
目標は「減らさないこと」ではなく、
“減っても破綻しない構造”を作ること。
そのうえで、
・数字のルール(取り崩し率・バッファ)
・見方のルール(どの指標を見るか・頻度)
を決めておくと、かなり心がラクになる。
① なぜ「減るのが怖い」のか?
FIRE勢あるあるの感覚。
「積み上げてきた資産を、自分の手で減らすのが怖い」。
これには、いくつか理由がある。
理由1:これまでずっと「増やすゲーム」だったから
- ずっと積立を続けてきた
- ずっと入金してきた
- 「増やす」が正義だった
ここからいきなり、
・引き出す
・減るのを見る
・資産グラフが右肩上がりじゃなくなる
という、ゲームのルールが真逆になる。
違和感や不安が出るのはむしろ普通だ。
理由2:「収入ゼロ」=やり直しが効かない感覚
- もうフルタイムでは働かない前提
- 大きく稼ぎ直すイメージが持ちにくい
その結果、「一度減ったら二度と戻らない気がする」怖さが生まれやすい。
理由3:「老後」の漠然とした不安
- 介護費
- 医療費
- 物価上昇
将来の支出が読みにくいぶん、
「今使ったら将来が危ないのでは?」という漠然とした不安が残る。
② 取り崩し設計の基本
まずは、数字のルールを持っておくと安心しやすい。
4%ルールは「目安」だが、メンタルにも効く
細かい前提はさておき、
「インフレ調整後で年間4%を取り崩しても、30年くらいは持つ可能性が高い」
という考え方が、いわゆる4%ルールだ。
ここから、
- 自分は3〜4%のどこにするか
- リスク低めなら3%、少し攻めるなら4%付近
といった形で、“ざっくりの守備範囲”を決めておく。
バッファの考え方
- 生活費◯年分の現金・安全資産を持つ
- 暴落時は、そこから生活費を出せるようにしておく
これだけで、
「株価が落ちても、数年は資産を売らなくていい」という余裕が生まれる。
フレキシブル取り崩しという発想
- 市場が好調な年 → 予定どおり、もしくは少し多めに使う
- 市場が不調な年 → 取り崩しを少し控えめにする
「毎年きっちり同じ額」じゃなくていい。
旅行を減らす、外食を少し減らす、一時的に軽く働く…など、
調整余地を持っているだけで、机上のルールが現実に近づいてくる。
セミリタイアの強み
パートタイムでも、ちょっとした副業でも、
「生活費の一部をフローで賄える」だけで、取り崩し不安はかなり減る。
③ メンタルを守るための“見方のルール”
数字の設計と同じくらい大事なのが、「どう資産を見るか」という視点の設計だ。
1. 総資産額だけを見ない
総資産だけを見ていると、
・少し減っただけでも「やばい」と感じる
・増減に一喜一憂しやすい
そこで、もう1つ基準を持つ。
「いまの資産で、生活費が何年分あるか?」
・生活費の◯年分
・「最低限ライン」なら◯年分
といった“年数ベースの指標”を持つと、短期の増減に振り回されにくくなる。
2. 見る頻度を決める
- 毎日資産チェック → ほぼメンタル削りマシン
- 月1回 or 四半期に1回の集計で十分なことが多い
「毎月◯日にだけ集計する」くらいのルールにしておくだけでも、
心の負担はかなり軽くなる。
3. 「減る月」は“想定内”とラベリングしておく
- 税金・保険の支払い
- 旅行・大きな買い物
あらかじめ、
「この月は資産が減る月」「ここで減っても、それが普通」
と決めておくだけで、減った時のショックをだいぶ和らげられる。
4. 「フローの安心材料」をあえて残しておく
- ちょっとした労働収入
- 不定期の仕事
- ポイント・クレカ還元・副収入 など
金額が小さくても、
「ゼロじゃない」という感覚自体が、取り崩しの怖さを下げてくれる。
④ よくあるNGパターン
❌ 減るのが怖くて、いつまでもFIREしない
- 「あと◯万円あれば安心」
- 「もう少し増えたら」
気づいたら、ずっと“準備中の人生”になってしまうケース。
❌ FIRE後に逆にリスクを取りすぎる
- 減った資産を「取り返そう」としてハイリスク投資に突っ込む
これは、FIRE後の失敗パターンとしてかなり危うい。
❌ 必要以上に節約して、「人生が痩せる」
- 減るのが怖すぎて、旅行・外食・趣味を極端に削る
- 「FIREのために生きている」状態に逆戻りする
資産を守るために、人生の満足度を全部削る。
これは本末転倒だと思う。
僕の感覚
FIRE後のお金との付き合い方は、
「減らさないゲーム」から降りることでもある。
減ってもいい設計。
減っても立て直せる余白。
減っても「この人生を選んでよかった」と思える使い方。
この3つがそろっていると、
「減ること」そのものが、あまり怖くなくなってくる。
まとめ
- FIRE後の資産は「減ってもいい前提」で設計する
- 目標は「減らさない」ではなく「減っても破綻しない構造」
- 4%ルールやバッファ・フレキシブル取り崩しで“数字のルール”を決める
- 総資産だけでなく「生活費◯年分」という指標も見る
- 見る頻度・減る月・小さなフロー収入など、メンタルを守る工夫もセットで用意する
- 資産を守るために、人生の満足度をゼロにしない
次回は、「FIRE後の“学び直し”とスキルアップ」をテーマに、
お金のためだけではない学びとの付き合い方について整理する予定。
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