前回の記事では、
FIRE後の生活費がどう変わるか(増える支出・減る支出・意外な盲点)
について整理した。
ここまでで、FIRE後の「生活コスト」のイメージはだいぶクリアになってきたと思う。
そこで出てくる次の疑問は、かなりシンプルだ。
FIREした後のお金って、どのくらいの頻度で、どうチェックすればいいんだろう?
毎日見るべき?
あまり見ない方がいい?
減っているのを見ると不安になるときは、どう付き合えばいい?
この回では、FIRE後の「お金との距離感」をテーマに、
- 毎月やること(ルーティン)
- 半年〜年1回やること(定期点検)
- やらない方がいいこと
を整理していく。
結論:毎日チャートではなく、「月1+年1」のゆるい定期点検がちょうどいい
日々の値動きはノイズ。
月1回と年1回の“健康診断”だけで十分。
FIRE後に目指したいのは、
- お金をちゃんと見ている安心感
- 見すぎてメンタルが削られない距離感
このバランスだ。
FIRE後にやりがちな「お金の見すぎ問題」
とくにFIRE直後ほど、
- 資産残高
- 評価額・含み損益
が気になりやすい。
毎日のように証券口座を開いて、
- 昨日より減っている…
- 今月マイナスだけど大丈夫かな…
と一喜一憂してしまうと、
- 不安が増える
- 余計な売買をしたくなる
- 「やっぱりFIREは無理かも」という気持ちが強まる
といったデメリットが大きい。
基本方針:「日々の揺れ」ではなく「年単位の流れ」を見る
FIRE後のお金は、
- 1日〜1週間の動き → ほとんどノイズ
- 数ヶ月〜数年のトレンド → 見るべき信号
だからこそ、
- 日々のチャート追い → 手放す
- 月1・年1の定期点検 → 習慣化する
という切り分けが大事になる。
FIRE後の「月1ルーティン」
① 口座残高とキャッシュポジションの確認
- 普通預金・当座残高
- 生活費用の現金クッション(何ヶ月分あるか)
- 近々の大きな支出(旅行・税金・年払いなど)の見込み
ここでは、評価損益を細かく分析する必要はない。
大事なのは、
今のキャッシュで、何ヶ月くらい安心して暮らせるか?
この感覚をつかんでおくこと。
② その月の収支をざっくり振り返る
- 生活費トータルはいくらくらいだったか
- 特別な支出(旅行・家電・教育費など)は何があったか
- 取り崩し額(または労働収入)はいくらだったか
1円単位の完璧な家計簿でなくても、
「今月は○万円くらいプラス/マイナスだった」がわかれば十分だ。
③ 「取り崩しペース」をチラ見する
- 年間の取り崩し予定(例:資産の3〜4%)
- 今のペースだと、ざっくり何%くらいになりそうか
ここで重要なのは、
明日から何かを劇的に変えることではない。
ちょっとペースが速いかも/遅いかも
と気づいること。その「気づき」が、後の修正力になる。
FIRE後の「半年〜年1回ルーティン」
① 全体の資産配分(ポートフォリオ)の確認
- 株式・債券・現金の比率
- 自分が決めていた配分とのズレ具合
- ズレが大きければ、ゆるくリバランスを検討
「必ず毎年リバランスしなきゃ」ではなく、
ズレが大きくなってきたらゆっくり戻すくらいのスタンスでも十分機能する。
② シミュレーションの“定期点検”
- 現在の資産額
- 年間の取り崩しペース(%)
- 今後の大きな支出(教育費・住宅・介護など)
これらをざっくり入れて、
このままのペースでも、だいたい大丈夫そうか?
を確認するための“健康診断”を、年1回くらいやっておくと安心感が違う。
前提条件を細かくいじり倒す必要はない。
③ 生活費と「やりたいこと」のバランス調整
- 思ったより使いすぎていないか?
- 逆に、楽しみを削りすぎていないか?
- この1年、「本当はやりたかったのに後回しにしたこと」はなかったか?
FIRE後の資産点検は、
単なる節約のための作業ではなく、
お金と人生のバランスを微調整するための時間
と捉えた方が、長く続けやすい。
やらない方がいいこと
① 毎日の評価額チェック
- 1日の上下に一喜一憂する
- ニュースのたびに不安になる
- 「今売るべきか?」と毎週悩む
これを続けると、
「お金の自由」と引き換えに「心の自由」を失うような状態になりやすい。
② ニュースベースで売買を繰り返す
- 暴落ニュース → 急いで売る
- 好材料ニュース → 焦って買う
とくにFIRE後は、
「動かない技術」の方が成果につながりやすい。
③ “完璧な管理”を目指す
- 1円単位の家計簿
- 毎月必ず長時間の分析
- 毎回「もっと良いやり方があるはず」とやり直す
資産管理は、
完璧を目指した瞬間にしんどくなる。
僕の感覚
FIRE後のお金の管理は、「がっつり監視」でも「完全放置」でもなく、
「ゆるく見守る」くらいがちょうどいい。
日々の騒がしさには近づかず、
月1・年1の“健康診断”だけはきちんとやる。
そして、数字だけでなく、
「生活の手触り」も一緒に確認する。
お金のために人生を支配されないようにするのがFIREなので、
資産管理もまた、「心が軽くなるやり方」に寄せていいと思っている。
まとめ
- FIRE後は「見すぎても、見なさすぎても」不安が増える
- 日々の値動きはノイズ。年単位の流れを見る
- 月1:口座残高・収支・取り崩しペースのざっくり確認
- 半年〜年1:資産配分・シミュレーション・生活とのバランス調整
- 完璧な管理より、「心が軽くなる管理」を優先していい
次回は、「FIREとインフレ・物価上昇の付き合い方」をテーマに、
物価上昇がFIREプランに与える影響や、
インフレを前提にした生活費・資産配分の考え方を整理していく予定。
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