前回は、FIREシミュレーションに溺れすぎないための考え方について整理した。
そして今日からは、実践フェーズの中でも非常に重要な
「支出の設計」に踏み込んでいきたい。
結論
FIREは「節約勝負」ではない。
固定費 × 変動費 × 生活満足度を、
長く続けられる形に設計した人が強い。
よくある勘違い:「節約すればFIREは早くなるでしょ?」
もちろん、支出が減ればFIREは早くなる。
それ自体は間違いではない。
ただ、これを“メイン戦略”にすると、だいたいこうなる。
- 我慢が増える
- ストレスが溜まる
- 生活の満足感が下がる
- そのうち続かなくなる
そして最悪の場合、
「FIREを目指すこと自体がつらい」という状態になる。
FIREは「生活を削る戦い」ではない
FIREは、
「どこまで生活を切り詰められるか?」という我慢大会ではない。
本質は、
「可能な限り幸せな生活を維持しながら、支出を整えていくこと」だと思っている。
そのときに重要になるのが、次の3つだ。
- 固定費
- 変動費
- 生活満足度
この3つの「掛け算」で支出を捉えると、見え方が大きく変わる。
① 固定費は「生活のベース」
固定費とは、たとえばこういうもの。
- 住居費(家賃・住宅ローンなど)
- 光熱費・通信費
- 生命保険・医療保険などの保険料
- 車を持っている場合の維持費(駐車場・自動車税など)
- サブスク各種(動画配信サービスなど)
一度決めると、基本的には毎月・毎年、淡々と出ていくお金たちだ。
固定費の特徴
- 一度決まると、ずっと続きやすい
- 支出全体の「土台」を支配する
- 見直しに成功すると、効果がずっと続く
だから、固定費の見直しは
「人生の設計を見直す」レベルのインパクトがある。
ただし、ここで勘違いしたくないのは、
「安ければいい」わけではないということ。
大事なのは、
「自分や家族の人生に合っている固定費かどうか」だ。
② 変動費は「人生の色」
変動費には、たとえばこんなものがある。
- 食費・外食費
- 日用品
- 趣味・娯楽(本・ゲーム・イベントなど)
- 旅行・レジャー
- 子どもとのお出かけ・家族イベント
変動費の特徴
- 人生の「楽しさ」や「充実感」と直結しやすい
- 削りすぎると幸せが目減りする
- ただし、コントロールは比較的しやすい
ここで大事なのは、
変動費を「減らすべき敵」と見ないこと。
変動費は、
「減らす対象」ではなく「納得の使い方に整える対象」だと考えた方がうまくいく。
③ 生活満足度という“第三の軸”
そして、FIREを目指すうえで見落とされがちだけれど、
実はとても重要なのが「生活満足度」という視点だ。
たとえば、こんな問いを投げてみる。
この支出は、生活の満足度にどれくらい効いている?
具体例で考えてみる。
- 月5,000円のサブスク → 実はほとんど使っていない
- 年1回の家族旅行 → 金額は大きいけれど、心に残る満足度がめちゃくちゃ高い
- なんとなくのコンビニ・ネットショッピング → 習慣になっているだけで満足度は低い
- 家族と過ごすための支出 → お金以上に「意味」がある
こうして見ると、
「金額の大小」よりも「人生にどれだけ意味があるか」が重要だと分かる。
3つを“掛け算”で考える
支出を、
「固定費」「変動費」「生活満足度」の3つの掛け算で見ると、判断しやすくなる。
固定費 × 変動費 × 生活満足度
理想に近いパターン
固定費 → 無駄が少なく、人生に合っている 変動費 → 「自分たちらしい使い方」になっている 満足度 → お金に対してリターンが大きい
危険なパターン
固定費 → 高いまま、なんとなく放置 変動費 → なんとなく使っている 満足度 → 実はあまり高くない
同じ支出額でも、後者は「なんとなくお金が消えていく人生」になりがちだ。
FIREを“続けられる設計”にする
FIREは短距離走ではなく、数年〜十数年単位の長期戦だ。
さらに言えば、FIRE後の人生も含めると「一生ものの設計」になる。
だからこそ、
「我慢で押し切る設計」は、どこかでほぼ必ず破綻する。
重要なのは、次のバランスだ。
- 続けられること
- 自分(と家族)らしいこと
- 無理がないこと
- それでもちゃんと前に進めること
このバランスが取れている支出設計が、FIREには一番効いてくる。
「節約がつらい人」へ
もし今、
「もう疲れてきた」「我慢ばかりしている気がする」「FIREを目指すのが楽しくない」
と感じているなら、それは節約が下手なのではない。
単に、
「支出の設計の仕方」を変えるタイミングが来ているだけだと思う。
僕の感覚
僕の感覚では、FIREの支出設計は
「生活を削る作業」ではなく、
「生活を整える作業」に近い。
何を守りたいのか。
何を手放しても大丈夫なのか。
どこに一番価値を感じているのか。
それを整理していくプロセスそのものが、
「自分や家族の人生をちゃんと見つめ直す時間」でもある。
まとめ
- FIREは「節約の勝負」ではない
- 固定費は生活のベース、変動費は人生の色
- 生活満足度という“意味の軸”が大事
- 3つの掛け算で支出を整理する
- 我慢ではなく「設計」で戦う
FIREは、
「幸せを削る話」ではなく、「幸せの形を整える話」だと思っている。
次回は、固定費の具体的な見直し戦術編として、
住宅・通信・保険・車・サブスクなどをFIRE視点でどう考えるか整理していく予定。
コメント