前回の記事では、
税金・社会保険をざっくりでも意識することと、
「年収」ではなく「手取りベース」で考えること
について整理した。
ここまで来ると、次の疑問はほぼこうなる。
結局、自分のFIREプランって、
Excelでどう組めばいいの?
この記事では、FP用の完璧な計算ではなく、
自分で更新できる「ざっくりシミュレーション」を1枚のシートで作るとしたらどう組むか?を整理する。
結論:完璧じゃなくていい。「1枚表」で十分
完璧なシミュレーションは要らない。
年ごとの資産推移 × 収入 × 支出が
ざっくり見える1枚表があれば十分。
年ごとの「入り」と「出」、資産残高の推移、
そして悲観・標準・楽観の3パターン。
この3つが乗ったシンプルな表があれば、FIREの全体像はだいぶ掴める。
まずは「1年ごと」の行を作る
✔ 行(row)は「年」
- 2025年
- 2026年
- 2027年
- …
- 65歳くらいまで(余裕があれば90歳くらいまで)
1年ごとに「その年のざっくりの収支と資産」を並べるイメージ。
✔ 列(column)はこのくらいで十分
- 年(西暦)
- 年齢
- 期首資産(年初の資産残高)
- 収入合計(手取りベース)
- 支出合計(生活費+ライフイベント)
- 運用利回り or 運用益
- 期末資産(年末の資産残高)
このくらいのざっくり感で十分、という前提で作る。
期首資産 → 期末資産のシンプルな考え方
基本のイメージはこれだけ。
期末資産 = 期首資産 + 収入合計 − 支出合計 + 運用益
運用益の扱い方は2パターン。
- 期首資産に対して「運用利回り × 期首資産」でざっくり利回りを乗せる
- 期首資産+(収入−支出)に対して利回りを乗せる
厳密さよりも、
自分で更新できて、直感的に分かるかどうかを優先してOK。
悲観・標準・楽観の3つのシナリオを作る
一番おすすめなのは、シートを3つ用意する or 1シート内で3ケースを並べること。
ざっくりした利回りの例
- 楽観:年率 5〜6%
- 標準:年率 3〜4%
- 悲観:年率 0〜2%
支出側も、
- 楽観:生活費は現状維持〜微増
- 標準:インフレ・子どもの成長を加味してじわっと増
- 悲観:教育費・医療費などがやや多め
最悪ケースでも「ここまでならギリギリ生き残れる」というラインを見ておくと、心理的な安心感がかなり違う。
年ごとに入れておきたい“イベント”の例
年ごとの行に、メモレベルでもいいので、こんなイベントを書いておくと表が一気に「自分の地図」っぽくなる。
- 子どもの進学(教育費が増える年)
- 住宅ローンの完済予定年
- 車の買い替え
- 親の介護が発生しそうなタイミング
- 自分のセミリタイア開始時期
- 配偶者の勤務形態の変化 など
ポイントは「精度」よりも「更新しやすさ」
よくあるパターンは、
最初から完璧を目指して詰め込みすぎる →
作って満足 → その後一切更新されない
FIREシミュレーションは、
作って終わりの“作品”ではなく、
年1〜2回見直す“ドキュメント”くらいの温度感がちょうどいい。
そのためにも、最初はざっくりでいい。
- インフレ率は「毎年2%」みたいな固定でOK
- 税金・社会保険も「ざっくり控除後でこのくらい」とまとめてOK
- 資産内訳(株・債券など)は1本の数字にしてもいいし、別シートに分けてもいい
シミュレーションの「罠」との付き合い方
罠① 数字がきれいすぎて安心しきる
- グラフが右肩上がり
- 期末資産がずっと増え続ける
- 未来がすべて“予定通り”の前提
現実はそこまできれいじゃない、という前提は常に持っておきたい。
罠② 悲観ケースだけ見て何も動けなくなる
- 悲観ケースを見て絶望する
- 「やっぱり自分には無理だ」と決めつけてしまう
大事なのは、
今ここで全てを確定させることではなく、
「どのあたりまで行けばFIRE・セミリタイアを検討していいか」の目安を持つこと。
僕の感覚
FIREシミュレーションは「正解を当てるツール」ではなく、
今どの位置にいて、どんなルートがありそうかを眺める地図。
数字は必ずズレる。
人生イベントも必ず予定外が起きる。
それでも、「何も知らない」のと「ざっくりでも知っている」の間には大きな差がある。
完璧な未来予想図より、
雑でも“自分の言葉で作った地図”の方がよっぽど役に立つ。
まとめ
- 行は「年」、列は「年齢・資産・収入・支出・運用益・期末資産」で十分
- 数式は「期末資産 = 期首資産 + 収入 − 支出 + 運用益」のシンプル形でOK
- 楽観・標準・悲観の3ケースをざっくり作ると判断の幅が見える
- 教育費・住宅・介護などのイベントも年ごとにメモしておく
- 精度より「更新しやすさ」を優先する
- シミュレーションは“当てるため”ではなく、“位置とルートを知るため”の道具
次回は、「シミュレーションと現実のズレとの付き合い方」をテーマに、
想定より資産が増えたとき・減ったとき、
予定より早くセミリタイアしたくなったとき、
「もう行けるかな?」と思ったときの判断軸を整理する予定。
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