前回の記事では、
シミュレーションはほぼ確実にズレる前提でOK。
大事なのは「ズレたときの軌道修正ルール」。
という話を書いた。
ここまでくると、心のどこかでこう思い始める人も多いはず。
結局、いくら貯まったら会社を辞めていいんだろう?
この記事では、
「資産いくら」だけにしないFIRE判定ラインの決め方を、
フルFIRE/セミリタイア/働き方シフトの3段階で整理していく。
結論:判定ラインは「数字 × 生活 × 心 × 家族 × バックアップ」の5点セット
FIRE判定ラインは「資産額」ではなく、
「数字 × 生活 × 心 × 家族 × バックアップ」で考える。
- 4%ルールはあくまで“スタートのものさし”
- 資産ラインは「最低ライン」と「安心ライン」の2本引き
- 一気にフルFIREではなく、「働き方シフト → セミリタイア → フルFIRE」と段階ラインで見る
「4%ルール」は“スタートのものさし”くらいでちょうどいい
FIRE界隈でよく聞く4%ルール。
- 年間生活費 × 25年分の資産
- = その資産から年4%ずつ取り崩しても長期的には持ちこたえやすい、という考え方
ただし現実には、
- アメリカの過去データ前提
- 税制・社会保険・医療費は国や家庭でバラバラ
- 人間の「働き方」も「支出」も途中で変わる
という前提がある。
4%ルール = 「絶対ライン」ではなく、
「最初にざっくり眺める物差し」くらいの扱いがちょうどいい。
「数字」のラインは2本+3段階で考える
① 年間生活費から2本のラインを引く
まずは過去1〜3年の家計から、
「現実の生活費」を出しておく。
- ミニマムライン: 少し我慢すれば、まあ暮らせる金額
- ちょうどいいライン: 特別な贅沢はしないけど、普通に幸せな金額
ここから、ざっくり目安を出す。
- フルFIRE候補:ちょうどいいライン × 25年分前後
- セミリタイア候補:ミニマムライン − 多少の労働収入で埋まればOK、というイメージ
② フルFIRE/セミリタイア/働き方シフトの3段階
フルFIRE判定ライン(例)
- ちょうどいい生活費 × 25年分前後の金融資産
- 生活費2〜3年分の現金クッション
- 住宅ローンなど大きな負債が重くない
セミリタイア判定ライン(例)
- ミニマム生活費の50〜70%は資産+運用収益でカバーできる
- 残りは「週◯日労働」「軽い仕事」で埋める設計が見える
- 資産は「完全に減り続ける」設計ではなく、横ばい〜ゆるやか減少くらい
働き方シフトライン(例)
- まだFIREではないが、「フルタイムじゃなくてもいいかな?」と思えるライン
- 生活防衛資金+αが貯まっている
- 転職・時短・リモート勤務へのシフトを現実的に選べる
いきなり「退職 or 続行」の二択にせず、
段階的にラインを作っておくと動きやすい。
「生活条件」のラインを決めておく
数字が足りていても、
生活の土台がガタガタだと不安定になりやすい。
チェックしたい生活条件の例
- 高金利の消費者ローンなどが残っていない
- 住宅コスト(家賃・ローン)が家計を圧迫しすぎていない
- 保険・税金・教育費など固定的な支出を把握できている
- 「この生活費なら、しばらく続けてもいい」と感じられる水準になっている
判定ライン = 「数字+生活の安定度」のセットで見るイメージ。
「心」と「家族」のライン
① 心のライン
FIREは「現実逃避ボタン」ではない。
- 仕事を減らした後、何をしたいかざっくり言える
- 「完全に不安ゼロ」ではないが、「やってみたい」が少し勝っている
- 生活レベルを少し下げてもいい、という許容度がある
- 資産の上下に一喜一憂しすぎない最低限のメンタル筋力がある
② 家族のライン
ここは本当に重要。
- 配偶者が「完全賛成」でなくても、「大反対ではない」状態になっている
- 家計と将来像について、最低限の会話ができている
- 教育方針・住む場所・生活レベルのイメージが大きくズレていない
- 「おかしくなったら、こう軌道修正しようね」という話がざっくり共有できている
家族の合意がないFIREは、
かなりの確率でメンタルを削る。
「バックアップライン」(引き返しルール)を先に決めておく
FIRE判定ラインとセットで用意しておきたいのが、
ここまで状況が悪化したら、
一度ギアを戻す。
という「バックアップライン」。
資産側のバックアップライン(例)
- 標準シミュレーションより資産が▲10〜20%下振れたら:固定費中心に生活費を見直す/セミリタイア時期を1〜2年後ろにずらす候補に入れる
- ▲20〜30%以上なら:軽い仕事・副業を増やす/週◯日分、もう少し働く生活に戻すことを検討
メンタル・生活側のバックアップライン(例)
- 毎月お金の不安で眠れない日が続く
- 夫婦間の会話が、ほぼお金の不安だけになっている
- 子どもの生活・進路に影響が出そうだと感じた
このラインを超えたら、
「一度立ち止まって収入を増やす側に戻る」が選択肢。
「最悪どうするか」が決まっていると、
判定ラインを超えるときの怖さがかなり減る。
シンプルな“判定チェックリスト”の例
フルFIRE候補のチェック(例)
- ちょうどいい生活費 × 25年分前後の金融資産がある
- 生活費2〜3年分の現金クッションがある
- 高金利の負債がない
- 家族と「だいたいOK」の合意が取れている
- 資産が▲20〜30%動いても、すぐには生活破綻しない設計がある
セミリタイア候補のチェック(例)
- ミニマム生活費の半分以上は資産+運用収益で賄えそう
- 週◯日働く/軽い仕事で埋められるイメージがある
- 今の働き方を続けるより「減らすメリット」の方が大きいと感じる
全部に丸がつかなくても、
「不安は残るけど、それでもやってみたい」くらいの状態になったら、
シフトを検討してもいいサイン。
僕の感覚
FIRE判定ラインは「ゴールテープ」じゃなくて、
「ここから先は、少し人生のギアを変えてもいいよ」という境界線。
フルタイムで走り続けるのか。
少しスピードを落として景色を見ながら進むのか。
一度止まって、別のルートに乗り換えるのか。
その「切り替えポイント」を、
数字・生活・心・家族・バックアップの5つで決めておくイメージ。
まとめ
- FIRE判定ラインは「資産額」だけでは決めない
- 4%ルールは“スタートのものさし”くらいでちょうどいい
- 資産ラインは「最低ライン」と「安心ライン」の2本引き
- フルFIRE/セミリタイア/働き方シフトの3段階で考える
- 生活条件・心・家族・バックアップの条件もセットでチェック
- 「ここまで崩れたら一度戻る」バックアップラインを先に決めておく
次回は、「お試しFIRE/プチFIREをどうやるか?」をテーマに、
育休・サバティカル・長期休暇を“FIREの実験場”にする発想を整理する予定。
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