前回の記事では、
FIRE情報に振り回されないための「情報ダイエット術」
について整理した。
情報の量を整えると、次に出てくるのが、
つい他人の進捗と比べてしまう問題だ。
同年代で◯◯◯◯万円達成しました。
30代でフルFIREしました。
こういう数字を見るたびに、心がざわつく人は多いと思う。
この記事では、
他人のペースと比べないFIREの進め方を、
「自分レーン」という考え方と実務テクニックで整理する。
結論:「速度」より「継続できるか」が大事
FIREは誰かとのレースではない。
自分の条件・優先順位に合ったレーンを、
無理なく走り続けられるかどうかの勝負。
比べる相手を、
「他人の資産」から「過去の自分」と「自分の設計」に変えていく。
なぜ、つい比べてしまうのか?
① 数字がいちばん分かりやすいから
- 年収
- 年齢
- 総資産
- 毎月の入金額
数字は比較しやすい。だからこそ、落ち込みの材料にもなりやすい。
② 条件の違いが画面から見えないから
本当は、
- 業界・職種・年収レンジ
- 地域・物価・住宅事情
- 家族構成・健康状態
- たまたまの運
などが全部違う。
でも、画面に映るのは「結果の数字」だけ。
同じ土俵で勝負しているように錯覚しやすい。
比較が続くと起こりやすいこと
- 入金力が足りない気がして、無理な節約をし始める
- 自分の計画をコロコロ変えたくなる
- 「このままじゃダメだ」と常に焦る
- 資産が伸びない時期に、自己否定がセットでやってくる
FIREは長期戦。
心が削られる設計は、それだけで大きなマイナスになってしまう。
「自分レーン」で考える、という発想
① 自分の前提条件セットを書き出す
まずは、自分がどんなレーンを走っているか言葉にしてみる。
- 年齢:◯歳
- 家族構成:配偶者+子ども◯人 など
- 仕事:フルタイム/時短/フリーランス
- 住居:持ち家/賃貸/実家
- 生活費:だいたい◯万円前後
- 優先順位:子ども時間/健康/趣味 など
このセットが違えば、目標スピードも伸び方も違って当然だ。
② 比べる相手を「過去の自分」にする
- 去年の自分と比べてどうか?
- 半年前より生活の安定感は増えたか?
- 1年前よりお金の不安は減ったか?
数字だけでなく、
- 生活のシンプルさ
- 無駄な支出が減ったか
- 仕事への依存度が下がったか
- 将来への見通しがクリアになったか
といった「広い成長」も、ちゃんと成長としてカウントしていく。
比較から距離を取るための実務テクニック
① 「自分の進捗メモ」をつける
A4一枚くらいでいいので、
- 年初の資産額
- 年末のざっくり目標
- 年間の平均入金額の目安
- やりたい生活改善(固定費の見直しなど)
を書いておく。
年末に見るのは、他人の資産額ではなくこのメモ。
② 進捗のものさしを複数にする
「総資産◯◯万円」だけを指標にすると、市場に振り回される。
例えば、
- 生活費の“最低ライン”が下がったか
- 生活防衛資金が◯ヶ月分まで貯まったか
- 自動積立が「考えなくても回る状態」になったか
- 心身を壊さずに働けているか
こうした指標も「進捗」として扱う。
③ タイムラインに“幅”を持たせる
ピンポイントで「◯歳でFIRE!」と決めるより、
- ◯代のうちに今の働き方からは卒業したい
- ◯〜◯年の間にフルタイム→セミリタイアへシフトしたい
くらいの幅を持たせておくと、現実と折り合いがつけやすくなる。
④ SNSの「比較トリガー」を減らす
- 資産額スクショ系アカウントはミュート
- 過激なFIREマウンティング系は距離を取る
- 実務的な情報・考え方に軸がある人だけフォロー
疲れる情報を“見ないようにする設計”も、立派な戦略だ。
人生フェーズの違いを意識する
例えば、
- 子どもがいるか・いないか
- 親の介護があるか・ないか
- 住宅ローンの有無
- 健康状態
これだけで、FIREへの距離感はまるで変わる。
「あの人はもっと速い」ではなく、
「あの人は“あの人のフェーズ”を走っている」と捉え直す。
そのうえで、
いまの自分のフェーズで、
できる最適解を選ぶ。
ここに集中した方が、長期的にはリターンが大きい。
僕の感覚
FIREは他人とのレースではなく、
自分と家族で選んだ人生ルートを、
ちゃんと歩めるかどうかの話。
速さや派手な数字より、
無理をしないペースで、
大事な人との時間を守りながら、
少しずつ自由度を上げていくこと。
そのほうが、FIREっぽさがあると感じている。
まとめ
- FIREで比較疲れしやすいのは「数字だけ」「結果だけ」が見えるから
- 比べる相手を「他人」から「過去の自分・自分の設計」に変える
- 自分の前提条件セット(年齢・家族・収入・優先順位)を書き出す
- 進捗のものさしを「総資産」だけにしない
- タイムラインに“幅”を持たせると現実と折り合いをつけやすい
- 疲れるSNSアカウントとは静かに距離を取っていい
- 自分レーンで淡々と進められる人が、長期戦に強い
次回は、「FIREとキャリアの再設計」をテーマに、
会社との距離感をどう変えていくか、
「辞める / 辞めない」以外の選択肢も含めて整理していく予定。
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