前回の記事では、
FIREと副業・小さなビジネスの付き合い方
について整理した。
ここまで来ると、かなり現実的な疑問が出てくる。
「会社員からセミリタイアや副業中心の生活に変えたら、税金や社会保険ってどうなるの?」というポイントだ。
この記事では、
- FIRE目線での税金・社会保険の「ざっくり構造」
- 会社員→セミリタイアで何が変わるのか
- よくある落とし穴と、最低限のチェックポイント
を整理していく。
結論:細かい制度を全部覚える必要はない
細かい条文を暗記する必要はない。
「所得の種類」「税金」「社会保険」という3つの枠組みと、
自分に関係する変化ポイントだけ押さえておけば十分。
大事なのは次の3つ。
- 収入が「どの種類の所得」になるか
- その結果、税金がどう変わるか
- 社会保険(健康保険・年金)の区分がどう変わるか
FIREと税金の「ざっくり構造」
所得税+住民税の二階建て
日本の税金は、ざっくり言うと二階建てだ。
- 上の階:所得税(国)
- 下の階:住民税(自治体)
ベースになるのは「課税所得」。
収入 − 必要経費 − 各種控除 = 課税所得 というイメージでOK。
会社員のあいだは、給与所得だけ&源泉徴収+年末調整でほぼ完結するが、
セミリタイア後は 「確定申告を前提にした生き方」 に変わっていく。
FIREでよく出てくる「所得の種類」
① 給与所得(パート・バイト・嘱託など)
- 会社やお店からもらう給料
- 所得税が給与から天引きされる
- 年末調整で完結しやすい
② 事業所得・雑所得(フリーランス・副業など)
- 請求書を出して受け取る報酬
- ブログ・電子書籍・コンサルなどの収入
- 収入 − 経費 = 利益 に対して税金
③ 配当所得・譲渡所得(株・投信など)
- 配当金や投資信託の分配金
- 株や投信の売却益
- 特定口座(源泉あり)なら基本は証券会社で完結
④ 不動産所得(賃貸・駐車場など)
規模によっては、完全に「もう一つのビジネス」になる。
社会保険(健康保険・年金)の3パターン
パターン1:会社員(厚生年金+健康保険)
- 保険料は給与から天引き
- 会社が半分負担してくれている
- サラリーマン時代の標準形
パターン2:退職 → 国民健康保険+国民年金
- 自分で保険料を支払う
- 多くの場合、保険料は「前年の収入」をベースに計算
- 退職翌年に負担感が強く出やすい
パターン3:配偶者の扶養に入る
- 配偶者が会社員で社会保険に加入している場合
- 健康保険の「被扶養者」+年金の「第3号」になれるケースがある
- 年収や働き方の条件は、制度や保険組合ごとに細かく違う
「扶養内で働きたい」と思ったら、
具体的な収入ラインは必ず最新情報を確認する前提が必要だ。
セミリタイア時のありがちなルート例
① 正社員のまま、時短勤務+社保継続
- 社会保険はこれまでどおり
- 手取りは減るが安定感は高い
- FIREというより「働き方の調整」に近い
② 正社員 → パートだが社保ライン超え勤務
- パートでも週の勤務時間を増やし、社会保険に加入
- 会社負担が乗るため、国保よりも負担感はマイルドになりやすい
③ 完全退職 → 国保+国民年金
- 「いったん会社から完全に離れる」FIREっぽい形
- 国保・年金は自分でフルに負担
- 退職翌年の保険料が「思ったより高い」と感じやすい
④ 配偶者の扶養内でパート+副業少し
- 健康保険・年金は配偶者の社会保険にぶら下がる形
- 自分の年収は「扶養条件内」に抑える前提
- 副業・小ビジネスは扶養条件とぶつからないよう要調整
FIRE目線でよくある「落とし穴」
① 住民税&国保が翌年にドーンと来る
退職翌年、前年の収入をもとにした住民税・国保が請求されて、
「こんなに払うの?」と感じやすい。
ざっくりでいいので、
退職翌年にどのくらいかかりそうかは一度シミュレーションしておきたい。
② 所得ほぼゼロなのに国保が高く感じる初年度
退職した年の収入は少ないのに、
前年までの所得をもとに国保が計算されて「割に合わない」と感じることがある。
仕様としてそういう設計になっている部分もあるので、事前に知っておくとダメージが減る。
③ 副業・個人事業の「経費」の線引きが曖昧
- なんでもかんでも経費にしてしまう
- 逆に、経費にしてよさそうなものも全部あきらめる
どちらもストレスの元なので、
グレーな部分は一度専門家に相談するくらいの距離感がちょうどいい。
④ 扶養条件を知らないまま副業を伸ばす
「気づいたら扶養ラインを超えていた」
→ 健康保険や年金の切り替えをさかのぼって行うケースもあり得る。
どこまでなら扶養内、どこから自分で保険に入るのかは、
早めに条件を確認しておきたい。
FIRE目線で「ここだけは試算したい」3ポイント
- 退職翌年の住民税+国民健康保険のざっくり見積もり
- セミリタイア後の「年間手取り」のざっくりイメージ
- 配偶者の扶養条件を超えるラインの目安(最新情報の確認が前提)
数字はざっくりで十分だが、「全然分からない状態」のまま踏み出すと不安が大きくなりやすい。
僕の感覚
税金・社会保険を「節税ゲーム」にしすぎると、
せっかく軽くしたい人生が、逆に重くなる。
大枠の構造と、自分に関わる変化ポイント、よくある落とし穴だけ押さえておき、
細かい数字や制度は「その年にもう一度確認する」くらいの距離感がちょうどいいと思っている。
FIREは、細かいルールを暗記する競技ではなく、
変化に合わせて設計を微調整していける人生のほうが大事だから。
まとめ
- 税金・社会保険は「所得の種類」「税金」「社会保険」の3つの枠組みで考える
- セミリタイア後は、給与以外の所得(副業・配当など)が増えやすい
- 社会保険は「会社員」「国保+国民年金」「配偶者の扶養」の3パターンを理解する
- 落とし穴は、退職翌年の負担・経費の線引き・扶養条件の見落とし
- 大枠を押さえ、ざっくり試算し、迷う部分は専門家に相談するくらいで十分
次回は、「FIREと住む場所(都市・地方・海外)の戦略」をテーマに、
住居コストとライフスタイルがFIREに与えるインパクトを整理していく予定。
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