前回の記事では、
FIREと税金・社会保険の「ざっくり構造」
について整理した。
ここまで来ると、次に気になるのはこういうポイントだと思う。
「どこに住むかで、FIREの難易度ってどれくらい変わるんだろう?」
この記事では、
- 都市・郊外・地方・海外のざっくり特徴
- FIREのフェーズ別に見た住む場所の考え方
- 失敗しないためのチェックポイント
を整理していく。
結論:住む場所は「正解」ではなく相性で決める
住む場所は「正解」ではなく、相性で決まる。
その相性は、
住居コスト / 仕事・収入 / 人間関係・ライフスタイル
のトレードオフで決まる。
そしてもう一つ大事なのは、
「いきなり一発移住」ではなく、「試す・混ぜる・戻れる前提」で設計すること。
FIREと住居コストの関係
FIRE目線で見ると、住居コストはかなり特殊な支出だ。
家賃や住宅ローンは家計の中でもインパクトが大きく、「一度決めると変えにくい」と感じやすい。
ただ、長期で見れば
「変えてもいい支出」でもある。
食費や光熱費を少しずつ削るより、家賃を1〜2万円下げるほうが、
FIREの難易度に与えるインパクトは大きいことが多い。
「どこに住むか」は、FIREにとってかなり強力なレバー(てこ)。
都市 vs 郊外 vs 地方:ざっくり特徴
① 都市(都心・大都市圏)
メリット
- 仕事・副業・バイトの選択肢が多い
- インフラ・医療・教育の選択肢が豊富
- 文化・娯楽・学びの機会が多い
デメリット
- 家賃・住宅費が高い
- 混雑・通勤・騒音などのストレス
- 子育て世帯は「広さ」の確保が課題になりやすい
収入は取りやすいが、コストも高い場所、というイメージだ。
② 郊外(都市近郊・ベッドタウン)
メリット
- 都市より家賃が下がりやすい
- スーパー・公園など、生活圏のバランスが取りやすい
- 通勤圏内なら仕事もまだ拾いやすい
デメリット
- エリアによっては車が必須になる
- 都心に比べると選択肢はやや減る
- 子どもの進学や親の介護との距離感も考える必要がある
収入とコストの中間を取りやすい場所、というイメージ。
③ 地方(地方都市・田舎)
メリット
- 家賃・土地代が圧倒的に安い地域もある
- 自然環境やゆったりした生活リズム
- 子育て環境がハマれば、かなり快適なケースも多い
デメリット
- 仕事・パート・バイトの選択肢が少ない
- 車前提の生活になりやすく、維持費もかかる
- 医療・教育の選択肢が限られることもある
- コミュニティの距離感が合わないと負担に感じることも
住居コストは激減するが、収入&選択肢は減りやすい場所、と考えると整理しやすい。
フェーズ別に見る「住む場所」の考え方
① FIRE準備期(フルタイム会社員〜資産形成期)
このフェーズでは、
収入を伸ばし、スキルやキャリアを積むことが主戦場になる。
住む場所で意識したいこと
- 通勤時間を短くして時間と体力を確保する
- 家賃と収入のバランスが取れているか
- 学び・人脈を得やすい環境か
あえて家賃が高い都市に住み、収入と成長機会を取りに行く選択も十分アリだ。
② セミリタイア期(労働時間を減らし始めるフェーズ)
ここからは、
「収入を少し残しつつ、生活コストを下げていく」という発想が現実的になる。
相性がいい例
- 家賃がやや安い郊外・地方都市
- 在宅ワークやパートを組み合わせられるエリア
- 子どもの教育・実家との距離も含めて「ちょうどいい」場所
フルFIRE前に、
住居コストだけ先に最適化しておくのも、有効な一手だ。
③ フルFIRE期(仕事の縛りがほぼなくなるフェーズ)
フルFIRE後は、仕事の勤務地に縛られず、平日も自由に動けるようになる。
このフェーズでは、
- 生活満足度(気候・自然・街の雰囲気)
- 人間関係(家族・友人との距離)
- 趣味・活動のしやすさ
を軸に住む場所を考えやすくなる。
選択肢の例
- 今の場所に住み続ける(これも立派な選択)
- 都市と地方の二拠点生活
- 季節ごとに住む場所を変える
「一生ここ」と決めず、
5〜10年単位で更新できる前提で選ぶと気持ちが楽になる。
地方移住にありがちな期待と現実
FIREと相性がよさそうに見える選択肢の代表が「地方移住」だ。
よくある期待
- 家賃が劇的に下がる
- 自然の中でのびのび暮らせる
- 子育て環境が良さそう
- 物価も安いイメージ
実際に向き合うポイント
- 仕事・副業の選択肢はどのくらいあるか
- 医療(特に子ども・高齢の家族)がどれくらい近くにあるか
- 雪・暑さ・災害など、気候との相性
- 車前提の生活にストレスがないか
- コミュニティの距離感が自分に合うか
失敗しないためのコツ
- いきなり家を買わず、まずは賃貸で暮らしてみる
- 短期移住・2〜3週間〜数カ月の「試し住み」をしてみる
- できれば季節を変えて複数回足を運ぶ
地方移住は「一発勝負」ではなく、
何度か試してから決めるプロジェクトくらいの温度感がちょうどいい。
海外移住は「コスト」だけで選ばない
FIRE界隈では、物価の安い国で暮らす・為替差を活かす、といった話もよく出てくる。
ロマンはあるが、チェックすべき前提条件も多い。
- ビザ・滞在許可
- 医療・保険
- 子どもの教育
- 治安・文化・言語
- 為替の変動リスク
「生活コストが安いから」という理由だけで飛び込むと、
想像以上にメンタルコストが重くなることもある。
まずは長期旅行・中期滞在で感触をつかんだり、
現地に長く住んでいる人の話をよく聞いたりしながら、慎重に検討するのが現実的だ。
住む場所を考えるときのチェックリスト
細かいシミュレーションより、まずはこのあたりをざっくり見るところからで十分だ。
- 家賃・住宅費(賃貸・持ち家・ローン・管理費)
- 交通手段とコスト(車の台数・駐車場・公共交通)
- 仕事・パート・副業の機会があるか
- 医療・教育・子育て環境(病院・学校・保育環境)
- 実家・親族・友人との距離(帰省コスト・精神的な距離感)
- 災害リスク(洪水・地震・土砂など、ざっくりでOK)
「支出」だけでなく、「収入」「人間関係」「安全性」を全部まとめて見るのがポイントだ。
僕の感覚
「どこに住めば一番得か?」より、
「どこなら自分たちが無理なく続けられるか」を軸にしたほうが、
長期的にはうまくいきやすい。
住む場所は、変えてもいい。
一度地方に出て、また都市に戻ってもいい。
子育て期と子ども独立後で変えてもいい。
「今の自分たちにとってのベスト」を選び、5〜10年ごとにアップデートしていくものくらいの軽さで捉えておくと、FIREは長く安定しやすいと思っている。
まとめ
- 住む場所は「正解」ではなく相性で決める
- 相性は、住居コスト・収入の取りやすさ・ライフスタイルのトレードオフ
- FIRE準備期・セミリタイア期・フルFIRE期で最適解は変わる
- 地方移住・海外移住は、一発勝負ではなく「試してから決める」プロジェクトにする
- 住む場所は、一生固定ではなく「何度変えてもいい設定」にしておくと自由度が上がる
次回は、「FIREの“お試し運転”」をテーマに、
試し取り崩し・試しセミリタイア・長期休暇などを使って、
FIRE後の生活をシミュレーションする方法を整理していく予定。
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