前回の記事では、
長期休暇・セミリタイア・取り崩しテストを使った「お試しFIRE」
について整理した。
そこまで来ると、次に出てくるのはかなり現実的なテーマだ。
「じゃあ実際に会社を辞めるとき、いつ・どう動けばいいんだろう?」
この記事では、
FIRE直前〜退職までの「出口戦略」として、
- 退職のタイミング
- 会社への伝え方
- いきなりゼロにしないブリッジ戦略
を整理していく。
結論:FIREは「お金が貯まったら終わり」ではない
FIREは「資産づくり」で終わりではなく、
会社の辞め方・離れ方まで含めて一つのプロジェクト。
ポイントは3つ。
- 退職ラインを数字だけでなく「心と家族」も含めて決めておく
- 会社への伝え方・タイミングを戦略的に設計する
- いきなりゼロにせず、「ブリッジ的な働き方」を持っておく
① まず「退職ライン」を決めておく
✔ 数字のライン(最低限の条件)
たとえば、次のような条件を「目安」として持っておく。
- 年間生活費 × ◯年分の資産がある
- 取り崩し率◯%(例:3〜4%)でシミュレーションしても耐えられる
- 現金・安全資産で生活費◯年分を確保している
「ここまでいったら、退職を真剣に検討していいライン」
を数字で持っておくイメージだ。
✔ 気持ち・家族のライン
数字だけ整っていても、
- パートナーが不安で眠れない
- 自分自身が「まだ怖い」と感じている
状態なら、それはまだ準備中と考えておいた方がいい。
- 家族との対話が一周しているか
- 「最悪こうなったらこう動くよね」という共有があるか
- 自分の中で「これはいける」と思えるか
数字 × 心 × 家族の3つが揃ってきたときが、「退職ライン」に近いタイミングだ。
② 退職の「タイミング」をどう決めるか
✔ カレンダー上のタイミング
たとえば、次のような要素をセットで考える。
- 賞与支給の直後 or 直前
- 年度末・四半期末など区切りのタイミング
- 子どもの進学・引っ越しなどライフイベント
「いつ辞めるか?」は、
お金・仕事の区切り・家族の予定をまとめて見ると決めやすくなる。
✔ メンタル面のタイミング
- 数字的には行けるのに「もう1年だけ…」を毎年繰り返している
- 職場ストレスが体調に出始めている
- 「ここでやめないと、何も変えないまま人生が進みそう」と感じている
こうしたサインが出てきたら、一度冷静に、「いつまで今の働き方を続けるか」を紙に書き出してみる価値がある。
③ 誰に・いつ・どう伝えるか
✔ 基本の流れ(イメージ)
- 最初に直属の上司へ「相談ベース」で話す
- 会社の規定に沿って、人事・総務へ正式に申請する
- チーム・関係部署へ順次共有していく
- 引き継ぎ計画・スケジュールを一緒に作る
✔ 「いつ言うか」の目安
多くの会社では、退職希望日の1〜3カ月前が目安。
業務の特殊性やポジションによっては、もっと前から動いた方がスムーズな場合もある。
✔ 伝えるときのスタンス
やってしまいがちなNGは、
- 会社や上司を批判しまくる
- 「FIREするんで辞めます」とドヤる
- 「もう働きたくないんで」と相手がモヤっとする伝え方をする
代わりに意識したいのは、
- これまでの感謝
- 自分の生き方・家族のことも含めた今後の方向性
- なるべく迷惑をかけずにバトンを渡したい、という姿勢
FIREを理由として伝えてもいいが、
「会社への不満」ではなく「自分の選択」として話す方が、お互いに後味がいい。
④ いきなりゼロにしない「ブリッジ戦略」
FIRE=完全無職・収入ゼロ・社会とのつながりゼロ
にする必要は、まったくない。
✔ 代表的なブリッジパターン
- 同じ会社で週3・嘱託・業務委託として残る
- 前職のスキルを活かして別の会社でパートタイム
- 小さなフリーランス・副業を少しずつ広げていく
- 学び直し・資格取得・準備期間として数年を使う
「0 or 100」ではなく、グラデーションで働き方を減らしていくイメージだ。
✔ ブリッジ戦略のメリット
- 精神的にいきなり真っ白にならない
- 生活費の一部をカバーできる
- キャリアの「線」を完全には切らずに済む
- もしFIREの方向性を変えたくなったとき、戻り道が残る
「FIREか会社員か」の2択ではなく、
中間の選択肢をいくつか持っておくと、人生設計がかなり楽になる。
⑤ 出口戦略でやりがちなNGパターン
- 感情が爆発した瞬間に「もう辞めます!」と衝動的に退職してしまう
- 家族とほとんど話さないまま退職時期を決める
- 退職理由を「会社批判モード」でぶちまけてしまう
- 引き継ぎを最小限にして、早く離れることだけを優先する
短期的にはスッキリするかもしれないが、
元同僚との関係や、もう一度働きたくなったときの選択肢を、自分で狭めてしまう。
僕の感覚
FIREの出口戦略は、
会社との関係をできるだけフラットにして終わらせるプロセス。
感謝と本音、自分のこれからの生き方、会社や同僚へのリスペクト。
それぞれを自分なりのレベルでちゃんと扱っておくと、
- 自分の中の「一区切り感」
- 家族と一緒に進む感覚
- また働きたくなったときの戻りやすさ
が、かなり変わってくる。
FIREは「会社から逃げ切るゲーム」ではなく、
自分の人生を自分のペースに戻していくプロセス。
まとめ
- FIREは資産づくりだけでなく、退職までの出口戦略がセット
- 退職ラインは「数字 × 心 × 家族」の3つで考える
- タイミングはカレンダー(賞与・年度末・ライフイベント)とメンタルの両面から決める
- 会社への伝え方は、批判ではなく「自分の選択」として伝える
- いきなりゼロにせず、週3・業務委託・副業などブリッジ戦略を持っておく
次回は、「FIRE後の“学び直し”とキャリアの再設計」として、
学びをどう活かすか・第二のキャリアをどう育てるかを整理していく予定。
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