前回の記事では、
FIRE後の1日の時間割と、習慣設計
について整理した。
1日のリズムが見えてくると、次に気になってくるのはたぶんここだ。
「そもそも、どこでその1日を過ごすのがいいんだろう?」
今の場所に住み続けるのか。
ちょっと地方に移住するのか。
二拠点生活にするのか。
海外ロングステイは現実的なのか。
この記事では、FIRE後の「場所の自由」をテーマに、
移住・二拠点・プチ移住の違いと、旅行気分で決めて後悔しないための考え方を整理する。
結論:FIRE後の「場所の自由」は“拠点設計”の話
FIRE後の「場所の自由」は、
「全部捨ててどこかへ行く」話ではなく、
“拠点の持ち方を設計し直す”話。
いきなり移住ではなく、段階戦略がおすすめだ。
- レベル1:プチ移住・長期滞在で“お試し”
- レベル2:二拠点生活で季節とコストのバランスを見る
- レベル3:そのうえで本格移住を検討
① よくある「FIRE=移住」のイメージと落とし穴
イメージ:海の近くで毎日ゆったり
- 海辺のカフェでPCを開く
- 毎日散歩
- 物価も安くて最高
このイメージ自体は悪くない。
ただし、ほとんどが「旅行モード」の感覚だ。
落とし穴1:旅行テンションで住む場所を決めてしまう
- 短期滞在のワクワク感
- たまたま天気が良かった
- 現地の“良い面”だけしか見えていない
その状態で決めると、
「暮らす」となった途端に想像と全然違う…というギャップが出やすい。
落とし穴2:固定費がじわっと増える
- 今の家+別の拠点
- 車が増える
- 家賃・光熱費・維持費が二重化する
「場所の自由=コストの自由」ではない。
むしろ固定費が重くなるリスクは高い。
落とし穴3:人間関係がリセットされすぎる
- 地元の友人と会いづらくなる
- 実家・親のケアがしにくくなる
- 仕事やコミュニティとの距離が遠くなる
時間と場所が自由になった代わりに、
人間関係がスカスカになってしまうケースもある。
② 場所の自由は「3つのレベル」で考える
「移住するか/しないか」の二択で決めない。
3つのレベルに分けて考えると、だいぶ現実的になる。
レベル1:プチ移住・長期滞在(1〜4週間〜数ヶ月)
- 1〜2週間〜1ヶ月程度、いつもと違う場所で暮らしてみる
- マンスリーマンションやAirbnb、ウィークリーホテルなどを使う
目的:
- 「旅行」ではなく「仮暮らし」として体感する
- 生活コスト・買い物・病院・子どもの環境などをざっくり確認する
まずは“お試しで住んでみる”段階。
ここを飛ばして、いきなり移住はかなりリスキーだ。
レベル2:二拠点生活(季節ごとに場所を分ける)
- 夏だけ涼しい地方
- 冬だけ暖かいエリア
- 平日はA拠点・週末はB拠点
ポイント:
- 「どちらも本拠地」と思うとコストが膨らむ
- 片方は「軽めの拠点」と割り切る(小さめの家/ホテル利用など)
二拠点生活は、
「固定費」と「移動コスト」をどう抑えるかがカギになる。
レベル3:本格移住(国内・海外)
- 住民票を移す
- 子どもの学校も現地
- 医療・行政・税金も「新しい地域」が基本
チェックすべきポイントの例:
- 医療体制
- 子どもの教育環境
- 仕事・収入源との距離
- 災害リスク
- 帰省・一時帰国のコスト
本格移住は、生活の大部分を“その場所に賭ける”選択になる。
レベル1・2を十分に試してからでも、まったく遅くない。
③ FIRE目線での「場所選びチェックリスト」
1. 生活コスト
- 家賃・住宅コスト
- 食費・日用品の価格感
- 移動費(車・公共交通)
FIREの場合、
「月いくらで、どんな生活水準になるか」がかなり重要だ。
2. インフラ(医療・交通・ネット)
- 病院の数・距離・診療科
- 公共交通の有無・本数
- ネット環境(在宅ワーク・趣味用)
病気になったときだけでなく、
定期検診や子どもの急な発熱も含めて考えておきたい。
3. 子ども・家族のライフイベント
- 保育園・幼稚園・学校へのアクセス
- クラブ活動や習い事の選択肢
- 将来の進学(中学・高校・大学)との距離感
FIREを目指す本人にとっては魅力的でも、
子どもにとっては選択肢が減ることもある。
4. コミュニティと「話が合う人」の存在
- 完全に知り合いゼロから始めるのか
- 多少のツテや知人がいるのか
- オンラインコミュニティで補えるのか
「話が通じる人が1人でもいるかどうか」は、
生活満足度にけっこう直結する。
5. 災害・気候リスク
- 地震・津波・台風・水害などのリスク
- 夏の暑さ・冬の寒さ
- 年間を通じた暮らしやすさ
「旅行で行って気持ちよかった季節」だけで決めないのがポイント。
④ よくある失敗パターン
❌ 旅行先のテンションのまま決める
- 「ここ最高!移住したい!」とその場で決める
- その季節しか知らない
- “生活の大変さ”を知らないまま決断する
❌ 固定費を一気に増やす
- 今の家も残す
- 移住先にも家を買う/長期契約する
- 車ももう1台…と増やしてしまう
結果として、
「FIREのための資産」が“住居コスト”に食われていく。
❌ 元の地域とのつながりを完全に切る
- 実家との距離が遠くなりすぎる
- 友人と自然に会えなくなる
- 「帰る場所」が心理的に遠くなる
「戻れる道」を残した設計にしておくと、
移住側の心理的プレッシャーもかなり軽くなる。
僕の感覚
FIRE後の「場所の自由」は、
人生の“舞台”を増やすためのものであって、
すべてを0か1で入れ替える話ではない。
まずは「長めの滞在」で試してみる。
二拠点という“グラデーション”を挟む。
それでも「ここだな」と思えたら、移住を検討する。
このくらいのステップで進めた方が、
「やってみてダメなら戻れる」余白が残る。
まとめ
- FIRE後の「場所の自由」は、拠点の持ち方を設計し直す話
- いきなり移住ではなく、プチ移住 → 二拠点 → 本格移住の3段階で考える
- 旅行テンションだけで決めると、生活面でのギャップが大きくなりやすい
- 生活コスト・医療・教育・コミュニティ・災害リスクは最低限チェック
- 「戻れるルート」を残したまま場所の自由を試すと、心理的にもかなり楽
次回は、「FIRE後のお金との付き合い方」をテーマに、
減っていく資産への不安と、取り崩しとメンタルの付き合い方を整理する予定。
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