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68.インフレが続いたらFIRE計画は崩れる?──“予測”より「インフレ耐性のある設計」に集中しよう

前回の記事では、

FIRE後の資産管理ルーティン(見すぎない・放置しすぎない距離感)

について整理した。

ここまでくると、多くの人が一度はこう考える。

物価がどんどん上がったら、FIRE計画って崩れちゃわない?

4%ルールはインフレに耐えられるのか。
円安や値上げラッシュの中でFIREは現実的なのか。
現金や債券はインフレに弱いと言われるけれど、どう対策すればいいのか。

この回では、インフレを「正確に当てる」のではなく、

インフレが来ても折れない設計にする

という視点から整理していく。


目次

結論:インフレは読めない。だからこそ“予測”より「インフレ耐性」を仕込んでおく

長期的には物価はじわじわ上がる前提で考える。
成長資産ゼロはインフレに弱すぎる。
生活費・ポートフォリオ・働き方に「伸び縮みの余白」を持たせておく。

この3つを押さえておくことで、

「インフレが怖いからFIREは無理」から、
「インフレが来ても、調整しながら進めばいい」へ変えていける。


インフレがFIREに与えるインパクト

インフレ(物価上昇)は、FIREに対してざっくり3つ効いてくる。

① 生活費がじわじわ上がる

  • 食費・光熱費・サービス料金
  • 教育・医療・介護などの長期コスト

「昔はこの金額で余裕だったのに…」という感覚が増える。

② 現金・一部の債券の「実質価値」が目減りする

  • 名目金額は同じでも、買えるものが減る
  • 定期預金・低利回り債券はインフレ局面で実質マイナスになりやすい

③ 心理的な不安が増える

  • 値上げニュースを見るたびに不安になる
  • 「このペースで上がったら破綻するのでは?」と感じやすい

だからこそ、インフレを“完璧に読もうとする”よりも、
インフレ前提でも持つ設計をしておく方が現実的だ。


設計レベルでできるインフレ対策

① 最初の“年間生活費”を少し保守的に置く

生活費の前提は、「ミニマム」だけでなく、
「ちょっと余裕を見た現実ライン」を持っておきたい。

  • 今すでに物価は上がり気味
  • 今後もじわじわ上がる前提で考える

そのため、

  • 「現時点の生活費+数%」でシミュレーションする
  • 「快適ライン」の方をベースにFIRE資産を設計する

といった“ちょっと保守的”な前提を置いておくと、後々ラクになりやすい。

② 成長資産(株式など)をゼロにしない

インフレに長期的に耐えやすいのは、

  • 企業利益とともに伸びやすい株式
  • 賃料とともに伸びる期待のある不動産・REIT

一方で、

  • 現金
  • 低利回りの名目債券

だけで固めると、

「数字は減っていないのに、生活レベルは下がっていく」

状態になりやすい。

FIRE後でも株式比率をある程度残しておくのは、
インフレ耐性の観点からも重要な意味がある。

③ 「インフレに弱い支出」と「そこまで影響を受けない支出」を分ける

生活費の中でも、

  • 家賃・光熱費・食費 → 物価の影響が出やすい
  • 住宅ローン(固定金利)・一部のサブスク → 名目固定になりやすい

生活費のうち、

インフレに弱い部分の割合がどのくらいか?

をざっくり把握しておくだけでも、
「インフレが来たときにどこを調整するか」が見えやすくなる。


ポートフォリオのインフレ耐性を高める視点

ここでは、マニアックな商品に飛びつくよりも、シンプルな枠組みで考える。

① 株式:インフレを“超える”ことを期待するエンジン

  • 長期的には、物価+αで成長することを期待
  • 短期ではインフレショック→株価下落も普通にあり得る

短期の揺れは許容しつつ、
長期のインフレ対策として持ち続ける立ち位置になる。

② 債券:インフレには弱いが、ポートフォリオの安定剤

  • 名目利回りが低いほど、インフレ局面では実質マイナスになりやすい
  • それでも「株式がガクッと下がったときのクッション」として機能

インフレ対策そのものではないが、
取り崩し時の「心の安定」を支える役割は大きい。

③ 現金:インフレには最弱だが、「安心」と「時間」を買う

生活費数年分の現金は、インフレには弱いがメンタルには強い。

  • 暴落&インフレ局面でも、今すぐ株を売らなくていい
  • 「回復を待つ時間」を買える

インフレとメンタルのバランスを取る意味で、
少なくしすぎない方がいい現金もある。

④ インフレ連動債・REITなどは“スパイス”として検討

  • インフレ連動債:物価連動を狙えるが、まだややニッチ
  • REIT:賃料や不動産価格の上昇とともに伸びる期待。ただしボラティリティもある

これらをメインにする必要はないが、

全体の一部を「インフレにやや強い資産」で持つ

という発想はアリだ。


生活サイドの“インフレ耐性”を高める

インフレ対策=金融商品だけではない。

① インフレの影響を受けやすい生活構造を減らす

  • 家賃依存が高い → 場所の自由を使ってコストの低い地域を検討
  • 外食・コンビニ依存 → 自炊・まとめ買いといった選択肢も持っておく

「常に節約しろ」という話ではなく、

物価が急に上がったときに「ギアを1段落とせる」選択肢を持っておく

イメージに近い。

② 軽く働ける“インフレ耐性スイッチ”を持っておく

インフレが長引くときに効いてくるのが、

  • ゆるく働けるスキル
  • すぐに増やせる副業ライン

「必要になったら月3〜5万円くらい稼げる」という状態は、
インフレ対策としてもかなり強い。

③ 「インフレが●年続いたらこうする」というマイルール

  • 生活費が想定より●%以上増えたら → 生活費の内訳を見直す
  • インフレ率が数年高止まりしたら → 取り崩し率を0.5ポイント下げて様子を見る
  • 物価上昇が続いたら → 軽く仕事を増やす/新しい収入源を試す

インフレが一定ラインを超えたら「自動的にそうする」と決めておくだけでも、
そのときの不安はかなり和らぐ。


メンタル面:インフレ=計画失敗、と決めつけない

インフレ局面でやりがちなのは、

「想定より物価が上がった=プランが崩れた=FIRE失敗」

と短絡的に捉えてしまうこと。

現実には、

  • 誰もインフレの正確な値は当てられない
  • 経済環境に合わせて「微調整しながら進む」のが普通
  • プランが一度も変わらないFIREの方がむしろ不自然

だから、インフレが計画よりきつくなってきたときは、
チェックリスト的にこう考えてみる。

  1. 生活費の構造を見直す余地はあるか?
  2. 取り崩しペース(%)を少し抑える余地はあるか?
  3. 軽く働く・副収入を増やす余地はあるか?
  4. それでも厳しければ、ライフプラン自体の再設計を検討するか?

「全部インフレを完璧に埋め合わせる」必要はない。
それよりも、

少しずつ調整しながら、全体として破綻しないラインを守る

くらいの感覚の方が、長期戦には向いている。


僕の感覚

インフレは「敵」でもあるけれど、
同時に「計画を硬直させないための刺激」でもある。

物価が動くからこそ、生活をアップデートする。
インフレがあるからこそ、成長資産を持つ意味がある。
変化があるからこそ、「伸び縮みできる人生設計」が生きてくる。

FIREの本質は、

「変化しない世界で生きる」ことではなく、
「変化しても折れない構造を作ること」。

インフレもその一部。
読もうとしすぎず、
耐性と選択肢を増やすきっかけにしてしまえばいい。


まとめ

  • インフレはFIREにとって「生活費・資産・メンタル」にじわじわ効いてくる
  • 予測するより「インフレ耐性を持つ設計」に集中する
  • 成長資産をゼロにせず、現金・債券とのバランスを取る
  • 生活構造・住む場所・働き方に「ギアを落とせる余地」を持たせる
  • インフレで計画が少しズレるのは前提。微調整しながら進めばいい

次回は、「FIREと為替・通貨リスク」をテーマに、
円安・円高がFIREプランに与える影響や、
外貨建て資産・海外ETFとの付き合い方を整理していく予定。

本棚
30代子持ち。夫婦でメーカー勤務。転職1回。FIREしたい。アイコンはタワシさん(https://x.com/tawashi3333)に描いていただきました。
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