前回の記事では、
税制・社会保障・年金などの「ルール側の変化」と、
制度変更・増税は「変わる前提」で設計するという考え方
について整理した。
ただ、FIRE後に大きく揺らすものは、制度だけではない。
子どもの進学や親の介護、パートナーの転職や離婚など、
家族に関するイベントは避けて通れないテーマだ。
結論:家族イベントは「例外」ではなく「前提」
家族イベントは「起きたら失敗」ではなく、
「計画をアップデートするタイミング」だと捉える。
そのうえで、次の3つを意識しておきたい。
- 家族イベント=計画崩壊ではなく、「計画のアップデート理由」と捉える
- お金だけでなく、時間・住む場所・仕事モードに調整余地を残す
- 何か起きたときの話し合い方を、元気なうち・仲がいいうちに決めておく
FIRE後に起こりやすい“家族イベント”たち
- 子どもの進学・留学・塾・習い事の急加速
- 親の病気・介護・施設入所・同居問題
- パートナーの転職・独立・休職・キャリアチェンジ
- 別居・離婚・再婚・シングル化
- きょうだい・親族の金銭トラブルへの巻き込み圧
どれも、「自分ひとりの都合では決められない」うえに、
感情とお金が強く絡むテーマだからこそ、FIREと相性が難しい。
発想のベース:「家族イベントはバグじゃない」
多くの人は、FIRE計画を立てるときに、
「平常運転モードが何十年も続く」前提で考えがちだ。
しかし現実には、
誰かが病気をし、誰かの人生プランが変わり、
家族構成も少しずつ変化していく。
家族イベントが起きたからFIRE失敗なのではなく、
「起きたから計画をアップデートするタイミングが来た」と見る。
視点①:お金の話を「全部FIREに載せない」
子どもの進学・教育の揺れ
私立か公立か、大学か専門か、留学するかしないか。
これは、親が完全にはコントロールできない。
ポイント
- フルオプションすべてをFIRE前提に載せない
- 「ここまでは家計から出すライン」を家族でざっくり共有しておく
- それ以上は奨学金・バイト・本人の選択も含めて考える
どこまで親が負担するかを、
ぼんやりではなく、幅を持たせつつ言葉にしておくと、後でブレにくい。
親の介護・医療の揺れ
- 介護にどこまで時間を使うか
- どこまでお金を負担するか
- どの地域で介護と生活を両立するか
ポイント
- 全てを自分たちだけで抱え込む前提にしない
- 介護保険サービス・施設・地域資源を使う前提で考える
- 「金銭支援」と「時間支援」をどう組み合わせるか話し合っておく
「自分が全部やるしかない」と思い込むと、
せっかくのFIREが「介護で燃え尽きる人生」になりやすい。
視点②:時間・場所・仕事モードに“可動域”を残す
時間の余白
毎日をやりたいことでギチギチに埋めてしまうと、
家族イベントが起きたときの調整余地がなくなる。
- 週に「何もしない日・予備日」をあえて作っておく
- 「◯割は自分時間、◯割は家族や人のための時間」とざっくり枠を決める
住む場所の可動性
- 親の近くに一定期間住むかもしれない
- 子どもの進学先に合わせて動くかもしれない
- パートナーの仕事に合わせて拠点を変えるかもしれない
「一生ここに住む」前提で全てを固めすぎない方が、
家族イベントへの対応力は高くなる。
仕事モードの可動性
家族イベントでお金が一時的に必要になったとき、
少しだけ働く/数年だけ収入モードを上げる、という選択肢があると楽になる。
FIRE後こそ、「ゼロ or フルタイム」ではなく、
「必要に応じて少し増やせる」働き方の選択肢を持っておく。
視点③:家族イベントが起きたときの“話し合い方”を決めておく
結局、一番こじれやすいのは、
「何が起きたか」よりも「どう話し合うか」だったりする。
元気なとき・仲がいいときに決めておきたいこと
- 想定外の支出が発生したとき、何から調整するか
- お金の話をするときのルール(責めない・一方的に決めない・感情と数字を分ける)
- 「このラインを超えたら、もう一度FIRE設計を作り直す」という目安
これは、重いエンディングノートではなく、
家族で使う「取扱説明書」に近いイメージだ。
実務:家族イベントに強いFIREのミニチェックリスト
年に1回くらい、次の3つだけでも確認しておきたい。
✔ 家族イベント用の“クッション資金”はあるか?
- 生活防衛資金とは別に、「家族イベント用のバッファ」をいくらまで用意するか
- 子ども・親・パートナーの「あり得そうなイベント」をざっくり洗い出しておく
✔ 家族とFIREの前提を共有できているか?
- お金と時間を、家族にどこまで使いたいか
- 教育・介護・住む場所についてのざっくりした方針
✔ 自分だけ「FIREの物語」を先に進めすぎていないか?
- 自分の中だけでFIRE後の理想が固まりすぎていないか
- パートナーや子どもが「自分の物語」を語る余地が残っているか
僕の感覚
FIREは「家族イベントを避けるため」の仕組みではなく、
家族イベントが起きても、どうにか立て直していける余白を増やす仕組みに近い。
子どもの人生は親のシナリオどおりには進まないし、
親やパートナーの健康・キャリアも、思い通りにはならない。
だからこそ、お金・時間・住む場所・働き方に余白を持ち、
誰かの人生が揺れたときに、一緒に揺れ直せる自由度を増やしておく。
それもまた、FIREの大事な価値のひとつだと思う。
まとめ
- 家族イベント(進学・介護・転職・離婚など)は「例外」ではなく「前提」
- 起きたらFIRE失敗ではなく、「計画をアップデートするタイミング」と捉える
- 教育費・介護費は全部をFIRE前提に載せず、「ここまでは家計から」の幅を言葉にしておく
- お金だけでなく、時間・場所・仕事モードに可動域を残す
- 何か起きたときの話し合い方を、元気なうちに決めておく
- FIREは、家族イベントを消す魔法ではなく、家族の人生が揺れても一緒に立て直す余白を増やす仕組み
次回は、「FIRE後の“飽き・マンネリ”とどう付き合うか」をテーマに、
やりたいことリストをやり切った後の空白感や、
毎日の自由がかえって虚無感につながるときの付き合い方を整理する予定。
コメント