前回の記事では、
FIRE後に「次に何を目指せばいいか分からない」ポスト目標ロスと、
大きなゴールではなく“生き方の方向性”を決め直すという考え方
について整理した。
一方で、FIRE後にこんな感覚を抱く人も多い。
せっかく時間ができたんだから、もっと成長しなきゃもったいない気がする。
新しい資格、新しいスキル、新しいキャリア。
「まだいけるはずだ」と思う自分と、「もうそんなに頑張りたくない」という自分が、中でケンカを始める。
この記事では、FIRE後も消えない“もっと成長しなきゃ病”との付き合い方を整理していく。
結論:成長をやめるのではなく、“成長の意味”をアップデートする
FIRE後に必要なのは、「成長をやめること」ではない。
成長の意味をアップデートすること。
- 外側の物差し(実績・肩書・収入)だけで測らない
- 「広がり」と「深まり」も成長としてカウントする
- 「休む力」「緩める力」も、成長の一部とみなす
なぜFIRE後も「成長しなきゃ」と自分を追い立ててしまうのか?
① 長年、「成長=生存戦略」だったから
会社員時代、多くの人にとって「成長し続けること」は、ほぼ生存戦略だった。
- 成長しないと置いていかれる
- スキルを増やさないと不安
- 出世レースに参加していなくても、「使える人材」でいなきゃというプレッシャー
そのクセは、FIREしたからといって、簡単に消えるものではない。
② 「止まる=堕落」と結びついているから
勉強をやめた自分、頑張る量を減らした自分、新しい挑戦がない自分に対して、
このままダメになっていくんじゃないか……
という漠然とした怖さを感じることがある。
「ちゃんとしている自分」であるために、成長を続けなきゃいけない気がしてしまう。
③ SNS・自己啓発コンテンツが「常に上を見せてくる」から
意識高いライフスタイル、新しい資格・副業・挑戦。
タイムラインは「まだまだ上がある」空気に満ちている。
その中で、
FIREしてのんびりしているだけの自分、なんか物足りないんじゃないか?
と感じやすくなるのも、自然なことだ。
FIRE後、「成長」の意味をアップデートする
① 外側の成果だけを「成長」と呼ぶのをやめてみる
まず手放したいのは、
成長 = 新しいスキル・資格・収入アップ
だけ、という定義。
FIRE後は、たとえばこんなものも成長としてカウントしていい。
- 怒りや不安に振り回される回数が減った
- 家族に当たり散らさずに済むようになった
- 無理な予定を入れず、自分を守れるようになった
- 「やらないこと」を決めるのが上手くなった
見た目には地味だが、人生全体で見たときのインパクトは大きい。
② 「縦の成長」だけでなく「横に広がる成長」も認める
会社員時代の成長は、縦方向——すなわち「今の専門性を深める」「今のキャリアを上に伸ばす」になりがちだ。
FIRE後は、ここに「横に広がる成長」を足していい。
- これまで触れてこなかった分野の本を読む
- 全く別ジャンルの趣味を始めてみる
- 年齢も価値観も違う人たちと話してみる
収入に直結しなくても、「世界の解像度が上がる方向の広がり」は、十分“成長”と呼べる。
③ 「深まり」としての成長もある
FIRE後は、
- これまで好きだったことを、もっと丁寧に味わう
- 家族との時間の「質」を少しずつ上げていく
- すでに持っている知識・経験を誰かに渡していく
といった「深める方向の成長」も取りやすくなる。
新しいことを増やすだけが成長ではない。
「成長欲」と「休む力」のバランスを整える実践アイデア
① 「全力アクセル」ではなく「3〜4割アクセル」に慣れる
FIRE後は、常に120%で頑張るモードから、「3〜4割のアクセルで長く続ける」モードに切り替えるくらいでちょうどいい。
- やることリストを「1日3つまで」に絞る
- 学びや仕事は「週◯コマ」だけ枠を決める
- 「あえて空白の日」を週に1日入れる
あえて“物足りないペース”を標準にしてみる。
② 「やることリスト」と同じくらい「やらないことリスト」を持つ
成長欲が強い人ほど、面白そう・学べそう・稼げそうなことに次々手を出したくなる。
そこで、
- これは今やらない
- FIRE後3年目以降に回す
- やるとしても週◯時間まで
という「やらない・後回し・枠を決めるリスト」を作っておくと、暴走しづらくなる。
③ 「今日は何も生産しなかった日」を、あえてカレンダーに残す
FIRE後のあるあるとして、「1日終わったのに何も生産していない気がして罪悪感だけが残る」というパターンがある。
そこで、
- 予定のない日を「ノープロダクトデー」と名付けておく
- カレンダーに「何もしない日」と書いておく
- 「今日は意図的に何も生み出さなかった」と記録する
こうすることで、「何もしていない=サボり」から、「何も生み出さない日=役割を果たした」に変換できる。
④ 「満足ライン」を意識的に下げる練習をしてみる
勉強するなら1時間、運動するなら30分、仕事するなら1日がっつり——。
こうした「高すぎる着手ライン」が、成長欲の裏側に潜んでいることは多い。
FIRE後は、
- 読書10分でもOK
- 知識メモ1行でもOK
- 散歩10分でもOK
という「小さな満足ライン」を意識的に設定し直すと、成長欲と休む力のバランスが取りやすくなる。
⑤ 「もう十分頑張ってきた自分」を一度ちゃんと評価する
成長欲が強い人ほど、これまでどれだけ無理をしてきたか、どれだけ長く全力で走ってきたかを振り返っていないことが多い。
数分でいいので、これまでの選択や乗り越えてきたこと、今の資産・家族・経験を紙に書き出してみる。
ここまでの自分、十分よくやってきた。
と一度だけでも言葉にしておくと、「もう全力疾走じゃなくていいかもしれない」という許可が出しやすくなる。
僕の感覚
FIREは「成長をやめる生き方」ではなく、
これ以上、自分をすり減らさない形で成長していくための生き方。
外側の物差しだけでなく、内側の物差しも増やす。
アクセルだけでなく、ブレーキとニュートラルも使えるようになる。
「休む」「緩める」「立ち止まる」も、スキルとして育てていく。
そういう意味で、「成長したい気持ち」と「もう頑張りすぎたくない気持ち」の両方を抱えたまま生きるのが、FIRE後の自然なスタイルなんだと思う。
まとめ
- FIREしても「もっと成長しなきゃ」と自分を追い立ててしまうのはよくある
- 長年「成長=生存戦略」だった名残が、FIRE後も残っている
- 成長を「外側の成果」だけで定義するのをやめる
- 横に広がる成長・深まる成長も、ちゃんとカウントする
- 成長欲と休む力のバランスを取るために:
- 全力アクセルではなく「3〜4割アクセル」に慣れる
- 「やらないことリスト」を持つ
- 「何も生産しない日」をあえて予定にする
- 満足ラインを意図的に下げる
- これまで頑張ってきた自分をちゃんと評価する
次回は、「FIRE後、のんびりしていると“サボっている気がする”罪悪感との付き合い方をテーマに、
怠けと余白の境界線をどう引くか、心の中の「監督」とどう距離を取るかを整理する予定。
コメント