前回の記事では、
FIRE後、「のんびり=サボり」に感じてしまう罪悪感と、
怠けと余白の違い、休む時間にも役割を与える考え方
について整理した。
ただ、FIRE後のメンタルにはもう一つ、かなり根深いテーマがある。
人には優しくできるのに、なぜか自分にはやたら厳しい。
「このくらいやって当然」と自分を追い込み、うまくいかないと全部自分のせいにしてしまう。
今日は、この「自分にだけ厳しすぎる問題」と、FIRE後の自己肯定感・自己信頼の整え方を考えていく。
結論:成果ベースの自己評価から、“存在ベースの自己信頼”へ
FIRE後は、「できたか/できなかったか」だけで自分を採点するのをやめて、
うまくいってもいかなくても「まあ自分なら何とかやっていける」と思える土台を育てていく必要がある。
- 外側の成果だけで自分を評価しない
- 自分の基準を、会社や他人から少しずつ取り戻す
- 過去の自分との比較で、「ちゃんと生きてきた証拠」を見つける
なぜFIRE後、「自分にだけ厳しくなりやすい」のか?
① 会社員時代、「評価されてなんぼ」の世界で生きてきたから
長く会社員として働いていると、
- 評価シート
- 人事考課
- 目標面談
など、「成果による評価」が当たり前の世界で生きる時間が長くなる。
その結果、
何をどれだけできたか = その日の自分の価値
という感覚が、無意識の前提になりやすい。
FIREしても、そのクセだけが残り続ける。
② 「FIREしたからにはちゃんとしなきゃ」というプレッシャー
FIREは、ある意味「普通じゃない選択」だ。
だからこそ、
- あのタイミングで辞めた自分の選択は間違ってなかったと証明したい
- FIREしたのにダラダラしていたら、言い訳できない
- 周りより自由なんだから、人一倍ちゃんとしていないといけない
というプレッシャーを、自分で自分にかけやすい。
せっかくFIREしたのに、こんな程度の自分でいいのか?
という感覚が、ずっと背中を追いかけてくる。
③ 「自分の価値」を外側のラベルに預けてきたから
肩書き・年収・役職・会社名。
こうしたラベルは、分かりやすい「価値の記号」になりやすい。
FIREによってそれを手放すと、
ラベルがない自分って、何なんだろう?
という不安が出てくる。
ラベルがない分、「中身で勝負しないといけない気がして」、自分に厳しくなりやすい。
自己肯定感ではなく、「自己信頼」を少しずつ育てる
① 自己肯定感は「感情」、自己信頼は「態度」
よく出てくる「自己肯定感」という言葉に加えて、ここではもう一つの軸として「自己信頼」を置いてみたい。
- 自己肯定感:自分を好ましく感じられる感覚
- 自己信頼:うまくいってもいかなくても、「まあ自分なら何とかやっていける」と思える態度
FIRE後は、いつも自分を大好きでいる必要はない。
それよりも、
失敗することもあるけれど、
それでも自分はちゃんと向き合ってきたし、
また何とか立て直していけるだろう。
と感じられる「自分への信頼残高」を増やしていくイメージでいい。
② 「できた/できない」ではなく、「向き合ったか/向き合わなかったか」で見る
自分に厳しい人ほど、
- 目標が達成できたか
- 期待したアウトプットが出せたか
だけで自分を採点しがちだ。
そこで、評価軸を一段ずらして、
今日は、「向き合うべきこと」にちゃんと向き合ったか?
と考えてみる。
- 完璧には進まなかったけど、作業を始めた
- しんどい感情から逃げずに、少し紙に書き出してみた
- 家族との対話を、10分でもちゃんと取った
こうした「向き合いの回数」を、自分の評価軸にしていく。
③ 「過去の自分へのツッコミ」をやめてみる
自己信頼を削る一番簡単な方法は、
あの時、もっとこうしておけばよかったのに。
と、過去の自分を責め続けることだ。
でも、過去の自分は、その時点の情報・体力・メンタルの中で、
そのときなりの「ベストっぽい選択」をしていることがほとんどだ。
- あの時は本当に余裕がなかった
- あの時はそれが最善に思えた
- 今だから「もっと良い手」が見えるだけ
こうやって、過去の自分に少しだけ同情する練習をしてみる。
過去の自分を責めるのは、結局「今の自分の土台」も否定することになるからだ。
FIRE後の「自分にだけ厳しい問題」との付き合い方
① 一日の「がんばり上限」を決める
自己批判が強い人ほど、
もっとできたはず。まだやれるはず。
と、自分のがんばりに「上限」がない。
FIRE後は逆に、
今日はここまでがんばったら、それ以上はやっちゃダメ。
という「がんばり上限」を決めてしまう。
- 仕事・作業は◯時間まで
- 頭を使うタスクは3つまで
- 夜の◯時以降は努力系のことはしない
「ここから先はがんばらないのがルール」と決めておくと、自分を追い込みすぎるクセが少しずつほぐれていく。
② 「今日の自分へのツッコミ」を「今日の自分への一言メモ」に変える
寝る前やお風呂の中で、
- 何やってるんだろう、自分
- もっとちゃんとできたでしょ
- このままじゃダメだよな
といった言葉が浮かぶ日がある。
この「ツッコミ」を、そのまま自責の言葉として握りしめるのではなく、
明日の自分へのメモ
に変換してみる。
- 今日は疲れているのに作業を詰め込みすぎたかも
- 今日はSNSをだらだら見すぎたな
- 明日は午前だけ集中して、午後は意図的に休もう
といった形で、「改善のヒント」だけ残して自分へのダメ出しを手放す。
③ 「よくやってるポイント」を、あえて3つ探す習慣
自分に厳しい人ほど、
- できていない部分
- 足りない部分
にはすぐ気づく一方で、
- もう十分がんばっている部分
には気づきにくい。
そこで、1日の終わりに、
「今日の自分、ここはよくやってたな」
と思えるポイントを3つ挙げてみる。
- 朝ちゃんと起きた
- 面倒な手続きを1つ片づけた
- 子どもと10分でもしっかり遊んだ
内容は小さくていい。
むしろ「これを褒めるのはさすがに甘すぎでは?」くらいの粒度でOK。
それをコツコツ積むことで、「自分は案外ちゃんと生きている」という感覚が静かに育ってくる。
④ 「未来の自分の味方」ポジションを取る
自分に厳しいモードのときは、
未来の自分は、今の自分のダメさにがっかりしているに違いない。
と、なぜか未来の自分まで「敵側」に置いてしまう。
そこで、
未来の自分は、「今の自分がここまでやってくれていて助かった」と思っているか?
と問い直してみる。
- 将来の自分が楽になるように、ちょっとだけ片づけておく
- 将来の自分が後悔しないように、今休んで体力を温存しておく
- 将来の自分が感謝しそうな「一手」を、今日ひとつだけ打つ
こうすると、今の行動が「未来の自分へのプレゼント」になり、ダメ出しではなく「応援」の方向に気持ちが向きやすくなる。
僕の感覚
FIREは、「自分に厳しくし続ける人生」をやめて、
少しずつ“自分の味方になる人生”に切り替えていくプロセスでもある。
他人の基準に合わせて自分を採点しない。
過去の自分を、戦友のように扱う。
未来の自分を、上司ではなく味方として想像する。
こうした細かい切り替えの積み重ねが、FIRE後の自己信頼の土台になっていく。
まとめ
- FIRE後も「自分にだけ厳しい問題」は起きやすい
- 背景には、評価社会・FIREした責任感・ラベル喪失による不安がある
- 自己肯定感だけでなく、「自己信頼」を育てる視点が大事
- 実践のポイント:
- 一日の「がんばり上限」を決める
- 自分へのツッコミを「明日の自分へのメモ」に変える
- 「よくやってるポイント」をあえて3つ探す
- 未来の自分を“味方ポジション”に置く
次回は、「FIRE後、“何者でもない自分が不安になる問題”」をテーマに、
肩書きのない人生をどう受け止めるかについて整理する予定。
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