前回の記事では、
FIRE後、「自分にだけやたら厳しくなる」問題と、
成果ベースの自己評価から自己信頼ベースへ切り替える考え方
について整理した。
そこから自然に出てくるのが、こんな感覚だと思う。
会社も辞めて、肩書きもなくなって、
今の自分って、いったい何者なんだろう?
「何をしている人ですか?」と聞かれると詰まる。
「無職」と言うには違和感がある。
かといって、胸を張って名乗れる肩書きもない。
今日はこの「FIRE後の“何者でもなさ”の不安」と、
肩書きのない人生をどう受け止めていくかを考えていく。
結論:ラベルがないのではなく、「自分の言葉」がまだ追いついていないだけ
FIRE後の「何者でもない不安」は、
ラベルが消えたからではなく、
“自分の言葉で自分を説明する経験”が少なかっただけ。
- 会社の肩書きに、自己紹介を丸投げしてきただけ
- ラベルがなくなった時間は、「自分の軸を試し書きする期間」
- きれいな肩書きより、「何を大事にして、どんな時間を過ごしているか」をゆるく語れれば十分
なぜFIRE後、「何者でもない不安」が出てくるのか?
① 会社の肩書きが、自己紹介を代行してくれていたから
会社員のあいだは、
- 「◯◯会社で××をやっています」
- 「△△業界で営業をしています」
と言えば、だいたいの説明が済んだ。
つまり、
自己紹介の8割くらいを、肩書きが代わりにやってくれていたとも言える。
FIREすると、その看板が外れる。
- 「今は何をしてるんですか?」
- 「お仕事は?」
と聞かれたとき、
自分の言葉で一から組み立てないといけない。
その「手持ちの文章がない」状態が、不安の正体に近い。
② 「わかりやすい役割の人だけが価値がある」という思い込み
SNSやニュースで取り上げられるのは、
- すごい実績の人
- 分かりやすい専門家
- 明確な肩書きを持つ人
が多い。
その景色を見続けていると、
「何者か」でなければ価値がない
ような感覚になりがちだ。
でも、実際の生活を支えているのは、
- ただ家族と普通に暮らしている人
- 地域で静かに関わり続けている人
- 名前の出ない仕事をコツコツ支えている人
のほうが圧倒的に多い。
「わかりやすい肩書き=価値」ではない。
ここを少しほぐしておくことが大事だ。
③ 「肩書きがない=中身がない」と感じてしまう
肩書きがあった時期は、
仕事をしている自分、忙しく動いている自分
を通して、「自分には役割がある」と感じられていた。
肩書きが外れると、
- 何か大きなことをしていないと意味がない気がする
- 成果を出していない期間は、空白に感じてしまう
という感覚になりやすい。
でも実際には、
- 家事や育児
- 親のサポート
- 自分の健康づくり
- 学び直し・実験期間
といった、目に見えにくい「ちゃんと生きている時間」が、たくさん存在している。
「何者でもない」は、実は“余白”に近い
① ラベルのない時間は、「色を混ぜ直せるキャンバス」
肩書きがある状態は、
- 「会社員としての自分」
- 「◯◯業界の人としての自分」
という「色」が、ある程度決まっていた状態だった。
ラベルを外すことは、一度「無色」に戻るような感覚に近い。
無色=空っぽ ではなく、
無色=どんな色も混ぜていい余白
と捉え直してみる。
- ちょっとだけ創作を混ぜてみる
- 家族時間を増やしてみる
- 地域活動を少し試す
- 学び直しの時間を差し込んでみる
この「混ぜてみる期間」そのものが、FIRE後の大事なプロセスになる。
② 「ゆるい肩書き」を自分で作ってみる
いきなりかっこいい肩書きを考える必要はない。
むしろ、
ざっくりした“ゆるい肩書き”を、自分で試し書きしてみる
くらいでちょうどいい。
たとえば:
- 「半分育児、半分個人プロジェクトの人です」
- 「家族時間多めの、ゆるいフリーランスっぽいことをしている人です」
- 「今は学び直し&小さな仕事づくりの実験中の人です」
ポイントは、「職業名」ではなく、
「時間の使い方」と「大事にしている軸」で自分を説明してみること。
他人にどう説明するか?——FIRE後の自己紹介テンプレ
① カジュアル版:「◯◯しながら、◯◯してます」
日常会話で使いやすいのは、この形。
今は◯◯しながら、◯◯してます。
例:
- 「今は子どもの送り迎えをしつつ、空き時間にブログを書いてます」
- 「今は前の仕事を辞めて、資産運用しながら、少しだけ在宅の仕事もしています」
- 「今は勉強し直しながら、ちょっとずつ小さなビジネスのタネを試してます」
職業名を決めにいくのではなく、「時間の流れ」をそのまま話すイメージ。
② きちんと説明したい相手向け:「元◯◯で、今は△△に時間を使っています」
すこし真面目に話すときは、
元◯◯で、今は△△に時間を使っています。
という構文が使いやすい。
例:
- 「元メーカーのエンジニアで、今は育児と資産運用、それから執筆に時間を使っています」
- 「元◯◯業界の営業で、今は在宅での仕事と、地域の活動に関わっています」
過去の肩書きも借りつつ、
今の時間の使い方にフォーカスする。
③ 面倒なときの“ざっくり肩書き”
正直、毎回ちゃんと説明するのが面倒なときもある。
そういうときの“逃げ道”として、
- 「いちおう自営業(フリーランス)です」
- 「今は在宅でできる仕事を少ししています」
と、ざっくりしたラベルを一つだけ借りておくのもアリだ。
本当はFIRE後の複雑な背景があるけれど、そこまで説明するほどの関係性ではない人に対しては、
“ざっくり肩書き”を一つ持っておくと、気持ちがラクになる。
自分の中の「自己紹介文」をアップデートする
① 自分に向けた自己紹介を書いてみる
FIRE後は、他人向けの自己紹介よりも、
自分の中で腑に落ちる「自分の説明」を持てるかどうかのほうが大事だ。
ノートに、こんな項目で書いてみる。
- 今、大事にしているものは何か?
家族時間 / 自由度 / 健康 / 学び など - 今、どんなことに時間を使っているか?
育児 / 執筆 / 創作 / 投資の勉強 / 散歩 など - これから、どんな方向に少しずつ動きたいか?
仕事を少し増やしたい / 地域とのつながりを増やしたい / 趣味のアウトプットを増やしたい など
これをつなげて、
今の自分は、◯◯を大事にしながら、△△に時間を使っていて、
これから少しずつ□□の方向に動いていきたい人。
くらいまで書けたら、それで十分「自己紹介」になっている。
② 「今年の自分は、何を増やして、何を減らしたか?」で振り返る
肩書きがないと、1年を振り返ったときに「何もしていない」ように感じやすい。
そこで、
今年は、どんな時間を増やして、どんな時間を減らしたか?
という観点で振り返ってみる。
増やしたもの:
- 家族との外出
- 散歩・運動
- 読書や学び直し
- 自分で考える時間
減らしたもの:
- 残業
- 無理な付き合い
- 通勤時間
- SNSのイライラ時間
これだけでも、
自分は「何もしなかった」のではなく、
「時間の配分を大きく作り変えた1年だった」
と、見え方が変わる。
僕の感覚
FIREは「肩書きを失う」話ではなく、
自分の時間を取り戻して、
その時間を何に使うかを試し直すプロセスだと思っている。
ラベルがない不安は、「言葉が追いついていないだけ」。
きれいな肩書きより、「どんな1日を過ごしているか」のほうが本質。
自己紹介文は、完成させるものではなく、毎年書き換えていいもの。
このあたりをゆるく許可しておくと、FIRE後の「何者でもなさ」は、
空白ではなく“余白”として扱えるようになっていく。
まとめ
- FIRE後、「自分って何者なんだろう?」という不安はよく出てくる
- それは「ラベルがないから空っぽ」ではなく、
自分の言葉で説明する経験が少なかっただけ - 会社の肩書きが自己紹介を代行してくれていたことに気づく
- 「わかりやすい役割の人だけが価値がある」という思い込みを手放す
- 無色=空っぽではなく、「どんな色も混ぜていい余白」と捉え直す
- 実務的なコツ:
- 「今は◯◯しながら、◯◯しています」テンプレを持っておく
- 元◯◯+今の時間の使い方で説明してみる
- 自分向けの自己紹介文をノートに書いてみる
- 「今年は何を増やして、何を減らしたか?」で1年を振り返る
次回は、「FIRE後、“目標がない不安”と“目標を詰め込みすぎる焦り”」をテーマに、
目標とのちょうどいい距離感について整理する予定。
コメント