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94.FIRE後、“また働きたくなったとき”の戻り方──社会復帰の心理的ハードルと付き合い方

前回の記事では、

FIRE後の「社会の役に立てていない気がする」モヤモヤと、
貢献の物差しを会社から生活圏へとシフトする考え方

について整理した。

そこまでいくと、次に出てくる感情は案外こんなやつかもしれない。

もう一回、何かしら“仕事”してみてもいいかもしれない。
少しでいいから、また働きたいかも。

今日は、FIRE後に“また働きたくなったとき”の戻り方と、
そのときに出てくる心理的ハードルの扱い方をまとめておきたい。


目次

結論:FIREは「二度と働かない契約」ではない

FIREは「二度と働かない契約」ではなく、
“働き方の選択肢を増やすための一時停止ボタン”だと考えた方が楽。

  • 戻るのは敗北ではなく、「戦略のアップデート」
  • フルタイムに戻るかどうかは、選択肢の一つにすぎない
  • 無理なく続けられる働き方を、グラデーションの中から選び直せばいい

なぜFIRE後、「また働きたくなる」のか?

① お金の不安がじわじわ出てくる

  • 想定より物価が上がった
  • 子どもの教育費が増えそう
  • 親の介護など、ドカンと出る支出が見えてきた

「理屈では大丈夫なはず」でも、
“一生取り崩し”という構造そのものが
心理的にしんどくなってくることは普通にあり得る。

② 暇ではないけれど「もっと外の世界と関わりたい」感覚

  • 家族時間・趣味・学び…やることはある
  • でも、社会との接点が少し物足りなくなってくる
  • 自分のスキルや経験を、もう少し誰かの役に立てたい

「暇」ではなく「関わりの密度」を上げたくなるパターン。

③ 学び直した結果、「この分野で働きたい」が出てきた

  • FIRE後に資格を取った
  • 新しい分野を勉強してみた
  • 個人で小さな活動をする中で、「仕事にしてみたい」が湧いてくる

これは、FIREが生んだ「新しいキャリアの芽」とも言える。

④ 周囲の変化を見て、自分ももう一歩踏み出したくなる

  • 子どもが手を離れ始めた
  • パートナーが仕事に復帰した
  • 同年代の人が新しい挑戦をしているのを見た

外部刺激に触れることで、
「自分ももう少しだけ、前に出てみたい」という気持ちが自然と湧いてくる。


まず整えたい「意味づけ」とメンタル

① 「戻る=負け」というストーリーを手放す

FIRE前のよくある固定観念:

いったん会社を辞めたら、二度と戻らないのが“かっこいい”FIRE。
戻ったら負け。FIRE失敗。

このストーリーを持ったままだと、

  • 働きたくなった自分を責める
  • 必要があっても働けない
  • 結果的に、生活もメンタルも不安定になる

FIREの目的は、「もう働かないこと」ではなく、
「働き方の自由度を上げること」。

戻ることも、働き方を変える自由の一部だ。

② 「一度決めたら一生固定」の考え方から降りる

  • 完全FIRE
  • セミリタイア
  • 週3勤務
  • フルタイム復帰

これらは「モードの名前」にすぎない。

そのときの自分と家族に合うモードを、
その都度選び直していい。

ゲームの難易度設定くらいの感覚で、
「状況に合わせて調整してOK」という前提を持っておきたい。

③ 自分の中の「納得ライン」を言葉にしておく

戻る前に、ノートなどに書いておきたいのは、

  • 何のために、どのくらい働くのか
  • どんな条件なら「戻ってよかった」と言えるか
  • 逆に、どんな状態になったら「やり方を変えよう」と決めるか

「自分なりの納得条件」があると、
他人の目線より、自分の感覚を軸にしやすくなる。


「戻る」ときの現実的なステップ設計

① 「働き方のグラデーション」を一覧にしてみる

いきなり「フルタイム正社員に戻る or 戻らない」の二択にしない方がいい。

たとえば、グラデーションで並べると:

  1. 完全FIRE(収入なし/運用と貯蓄のみ)
  2. 超ライトな活動
    • ボランティア
    • 地域の手伝い
    • 月数回の単発バイト
  3. 収入は少ないけど、社会との接点を作る働き方
    • 週1〜2日のパート
    • 短時間アルバイト
    • スポットの業務委託
  4. ある程度の収入と責任を持つ働き方
    • 週3勤務
    • フルリモートの契約業務
    • 副業ベースのプロジェクト
  5. フルタイム正社員に近い働き方
    • 正社員復帰
    • フルタイムの業務委託
    • 自営業フルコミット

この中から、

  • 今の自分の体力・メンタル・家族状況
  • お金の必要度

に応じて、「1段か2段だけ上げてみる」くらいがちょうどいい。

② お金の「目標ライン」と「撤退ライン」を決めておく

戻る理由がお金寄りなら、ざっくりでいいので

  • 毎月いくら稼げれば十分か(目標ライン)
  • 時給・日給換算で、これ以上下回るならやらないライン(撤退ライン)

を決めておきたい。

お金以外の目的(つながり、成長、やりがい)がメインなら、

「収入はこのくらいでもOK。その代わり、時間とストレスはこれ以下」

など、お金以外の条件を優先して設計するのもあり。

③ 「まずは期間限定」で試す

いきなり「一生この働き方でいく」と決めない。

  • 3か月だけやってみる
  • 半年だけやってみる
  • プロジェクト単位で受けてみる

など、期限付きの“お試し復帰”として捉えると気が楽になる。

終わりが決まっていれば、

  • 合わなかったときにスッと降りやすい
  • 続ける・やめるの判断も落ち着いてできる

④ 「何者として名乗るか」を決めておく

再び働くときに地味に悩むのが、
「自分をどう説明するか」問題。

  • 「FIREしてました」と言うと、説明が面倒
  • 「無職でした」と言うと、自分も相手も気まずい

そんなときは、もう少しニュートラルな表現にしてしまっていい。

例:

  • 「フリーでちょっと仕事をしていました」
  • 「家族の事情で仕事をセーブしていました」
  • 「学び直し期間を取っていました」

事実と完全にズレなければ、
自分と相手の両方がやりやすい言い方でOKと割り切っていい。


戻るときにハマりやすい落とし穴

① 不安から、条件の悪すぎる仕事に飛びつく

  • 「とにかく稼がなきゃ」で、ブラック寄りの仕事を受けてしまう
  • 時給に比べて責任だけ重い仕事に飛びつく

→ FIRE前より、むしろ生活が苦しくなることもある。

「少し時間をかけてでも、条件を選ぶ」余裕は持っておきたい。

② 自分を責めながら働く

  • 「FIREなのに戻ってしまった…」
  • 「自分はFIREに向いていなかったんだ」

と、自己否定モードのまま働き始めると、
どんな仕事も苦しく感じやすい。

戻る・戻らないのジャッジより、

今の自分と家族にとって、
この選択はプラスが大きいか?

だけを見て、静かにOKを出してあげたい。

③ 「戻った=一生このまま」と決めつける

  • 1回フルタイムに戻る
  • 「もうここから動いてはいけない」と自分を縛る

となると、FIRE前と構造が同じになってしまう。

今回の働き方は、「この数年の最適解」。
5年後は、また違う形を選び直していい。

くらいの柔らかさで持っておくと、
戻ったあとも息がしやすい。


僕の感覚

FIREは「生涯ノンストップの無職モード」ではなく、
人生の中で何度か行き来しながら、働き方を調整していくための仕組み。

ある時期は、完全に仕事を休む。
ある時期は、週3くらい働く。
ある時期は、やりたい仕事をフルでやってみる。
またしんどくなったら、いったんペースを落とす。

この揺れ動きそのものを「失敗」ではなく「呼吸」と捉えられるかで、
FIRE後の生きやすさはかなり変わると思う。


まとめ

  • FIRE後、「また働きたくなる」のは自然なこと
    • お金の不安
    • 社会との関わりを増やしたくなる気持ち
    • 学び直しから生まれる「この分野で働きたい」
  • 戻るときに大事なメンタル整理:
    • 「戻る=負け」のストーリーを手放す
    • モードは一生固定ではなく、何度でも選び直していい
    • 自分なりの「納得ライン」を言葉にしておく
  • 実務的な戻り方:
    • 働き方のグラデーションから、1〜2段だけ上げて試す
    • お金の目標ライン&撤退ラインを決めておく
    • まずは期間限定の“お試し復帰”にする
    • 自分をどう名乗るか、ニュートラルな言い方を用意しておく
  • 落とし穴:
    • 不安から条件の悪い仕事に飛びつく
    • 自分を責めながら働き続ける
    • 「戻った=一生このモード」と決めつける

次回は、「FIREの考え方は“完全FIRE”を目指さなくても使える」をテーマに、
FIRE思想を日常の働き方だけに取り入れる方法について整理する予定。

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30代子持ち。夫婦でメーカー勤務。転職1回。FIREしたい。アイコンはタワシさん(https://x.com/tawashi3333)に描いていただきました。
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