前回の記事では、
FIRE後の「社会の役に立てていない気がする」モヤモヤと、
貢献の物差しを会社から生活圏へとシフトする考え方
について整理した。
そこまでいくと、次に出てくる感情は案外こんなやつかもしれない。
もう一回、何かしら“仕事”してみてもいいかもしれない。
少しでいいから、また働きたいかも。
今日は、FIRE後に“また働きたくなったとき”の戻り方と、
そのときに出てくる心理的ハードルの扱い方をまとめておきたい。
結論:FIREは「二度と働かない契約」ではない
FIREは「二度と働かない契約」ではなく、
“働き方の選択肢を増やすための一時停止ボタン”だと考えた方が楽。
- 戻るのは敗北ではなく、「戦略のアップデート」
- フルタイムに戻るかどうかは、選択肢の一つにすぎない
- 無理なく続けられる働き方を、グラデーションの中から選び直せばいい
なぜFIRE後、「また働きたくなる」のか?
① お金の不安がじわじわ出てくる
- 想定より物価が上がった
- 子どもの教育費が増えそう
- 親の介護など、ドカンと出る支出が見えてきた
「理屈では大丈夫なはず」でも、
“一生取り崩し”という構造そのものが
心理的にしんどくなってくることは普通にあり得る。
② 暇ではないけれど「もっと外の世界と関わりたい」感覚
- 家族時間・趣味・学び…やることはある
- でも、社会との接点が少し物足りなくなってくる
- 自分のスキルや経験を、もう少し誰かの役に立てたい
「暇」ではなく「関わりの密度」を上げたくなるパターン。
③ 学び直した結果、「この分野で働きたい」が出てきた
- FIRE後に資格を取った
- 新しい分野を勉強してみた
- 個人で小さな活動をする中で、「仕事にしてみたい」が湧いてくる
これは、FIREが生んだ「新しいキャリアの芽」とも言える。
④ 周囲の変化を見て、自分ももう一歩踏み出したくなる
- 子どもが手を離れ始めた
- パートナーが仕事に復帰した
- 同年代の人が新しい挑戦をしているのを見た
外部刺激に触れることで、
「自分ももう少しだけ、前に出てみたい」という気持ちが自然と湧いてくる。
まず整えたい「意味づけ」とメンタル
① 「戻る=負け」というストーリーを手放す
FIRE前のよくある固定観念:
いったん会社を辞めたら、二度と戻らないのが“かっこいい”FIRE。
戻ったら負け。FIRE失敗。
このストーリーを持ったままだと、
- 働きたくなった自分を責める
- 必要があっても働けない
- 結果的に、生活もメンタルも不安定になる
FIREの目的は、「もう働かないこと」ではなく、
「働き方の自由度を上げること」。
戻ることも、働き方を変える自由の一部だ。
② 「一度決めたら一生固定」の考え方から降りる
- 完全FIRE
- セミリタイア
- 週3勤務
- フルタイム復帰
これらは「モードの名前」にすぎない。
そのときの自分と家族に合うモードを、
その都度選び直していい。
ゲームの難易度設定くらいの感覚で、
「状況に合わせて調整してOK」という前提を持っておきたい。
③ 自分の中の「納得ライン」を言葉にしておく
戻る前に、ノートなどに書いておきたいのは、
- 何のために、どのくらい働くのか
- どんな条件なら「戻ってよかった」と言えるか
- 逆に、どんな状態になったら「やり方を変えよう」と決めるか
「自分なりの納得条件」があると、
他人の目線より、自分の感覚を軸にしやすくなる。
「戻る」ときの現実的なステップ設計
① 「働き方のグラデーション」を一覧にしてみる
いきなり「フルタイム正社員に戻る or 戻らない」の二択にしない方がいい。
たとえば、グラデーションで並べると:
- 完全FIRE(収入なし/運用と貯蓄のみ)
- 超ライトな活動
- ボランティア
- 地域の手伝い
- 月数回の単発バイト
- 収入は少ないけど、社会との接点を作る働き方
- 週1〜2日のパート
- 短時間アルバイト
- スポットの業務委託
- ある程度の収入と責任を持つ働き方
- 週3勤務
- フルリモートの契約業務
- 副業ベースのプロジェクト
- フルタイム正社員に近い働き方
- 正社員復帰
- フルタイムの業務委託
- 自営業フルコミット
この中から、
- 今の自分の体力・メンタル・家族状況
- お金の必要度
に応じて、「1段か2段だけ上げてみる」くらいがちょうどいい。
② お金の「目標ライン」と「撤退ライン」を決めておく
戻る理由がお金寄りなら、ざっくりでいいので
- 毎月いくら稼げれば十分か(目標ライン)
- 時給・日給換算で、これ以上下回るならやらないライン(撤退ライン)
を決めておきたい。
お金以外の目的(つながり、成長、やりがい)がメインなら、
「収入はこのくらいでもOK。その代わり、時間とストレスはこれ以下」
など、お金以外の条件を優先して設計するのもあり。
③ 「まずは期間限定」で試す
いきなり「一生この働き方でいく」と決めない。
- 3か月だけやってみる
- 半年だけやってみる
- プロジェクト単位で受けてみる
など、期限付きの“お試し復帰”として捉えると気が楽になる。
終わりが決まっていれば、
- 合わなかったときにスッと降りやすい
- 続ける・やめるの判断も落ち着いてできる
④ 「何者として名乗るか」を決めておく
再び働くときに地味に悩むのが、
「自分をどう説明するか」問題。
- 「FIREしてました」と言うと、説明が面倒
- 「無職でした」と言うと、自分も相手も気まずい
そんなときは、もう少しニュートラルな表現にしてしまっていい。
例:
- 「フリーでちょっと仕事をしていました」
- 「家族の事情で仕事をセーブしていました」
- 「学び直し期間を取っていました」
事実と完全にズレなければ、
自分と相手の両方がやりやすい言い方でOKと割り切っていい。
戻るときにハマりやすい落とし穴
① 不安から、条件の悪すぎる仕事に飛びつく
- 「とにかく稼がなきゃ」で、ブラック寄りの仕事を受けてしまう
- 時給に比べて責任だけ重い仕事に飛びつく
→ FIRE前より、むしろ生活が苦しくなることもある。
「少し時間をかけてでも、条件を選ぶ」余裕は持っておきたい。
② 自分を責めながら働く
- 「FIREなのに戻ってしまった…」
- 「自分はFIREに向いていなかったんだ」
と、自己否定モードのまま働き始めると、
どんな仕事も苦しく感じやすい。
戻る・戻らないのジャッジより、
今の自分と家族にとって、
この選択はプラスが大きいか?
だけを見て、静かにOKを出してあげたい。
③ 「戻った=一生このまま」と決めつける
- 1回フルタイムに戻る
- 「もうここから動いてはいけない」と自分を縛る
となると、FIRE前と構造が同じになってしまう。
今回の働き方は、「この数年の最適解」。
5年後は、また違う形を選び直していい。
くらいの柔らかさで持っておくと、
戻ったあとも息がしやすい。
僕の感覚
FIREは「生涯ノンストップの無職モード」ではなく、
人生の中で何度か行き来しながら、働き方を調整していくための仕組み。
ある時期は、完全に仕事を休む。
ある時期は、週3くらい働く。
ある時期は、やりたい仕事をフルでやってみる。
またしんどくなったら、いったんペースを落とす。
この揺れ動きそのものを「失敗」ではなく「呼吸」と捉えられるかで、
FIRE後の生きやすさはかなり変わると思う。
まとめ
- FIRE後、「また働きたくなる」のは自然なこと
- お金の不安
- 社会との関わりを増やしたくなる気持ち
- 学び直しから生まれる「この分野で働きたい」
- 戻るときに大事なメンタル整理:
- 「戻る=負け」のストーリーを手放す
- モードは一生固定ではなく、何度でも選び直していい
- 自分なりの「納得ライン」を言葉にしておく
- 実務的な戻り方:
- 働き方のグラデーションから、1〜2段だけ上げて試す
- お金の目標ライン&撤退ラインを決めておく
- まずは期間限定の“お試し復帰”にする
- 自分をどう名乗るか、ニュートラルな言い方を用意しておく
- 落とし穴:
- 不安から条件の悪い仕事に飛びつく
- 自分を責めながら働き続ける
- 「戻った=一生このモード」と決めつける
次回は、「FIREの考え方は“完全FIRE”を目指さなくても使える」をテーマに、
FIRE思想を日常の働き方だけに取り入れる方法について整理する予定。
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