前回は、「FIRE設計シートを1枚にまとめる回」だった。
ここまで来た人は、FIREの基礎設計としてはかなりレベルが高い状態にあると思う。
ただ、この段階でかなり多くの人がハマる罠がある。
それが、
シミュレーション沼。
今日はここについて整理していきたい。
結論
シミュレーションは「未来を当てるための道具」ではない。
不安を整理して、安心して前に進むための“補助ツール”。
この前提を見失うと、一気にしんどくなる。
「シミュレーション沼」とは何か?
FIREについて考え始めると、Excelやアプリでとにかく無限にいじりたくなる。
- 年利◯%の場合
- もっと保守的なリターンの場合
- 暴落が途中で起きた場合
- インフレが続いた場合
- 為替が動いた場合
- 税金をもっと精緻に考慮したバージョン
- 退職時期を変えたケース
そして、次第にこういう状態になる。
- 計算が増えるほど不安が増える
- 条件を変えるたびに未来がまったく違って見える
- 「結局どれが現実なんだっけ?」と分からなくなる
- 永遠に最適解を探し続けるモードに入る
こうなると、
FIREの設計が前に進むどころか、
「考えるだけで疲れるプロジェクト」になっていく。
なぜシミュレーションは“不安を増やす”のか?
理由はシンプルで、
未来は、完全にはコントロールできないから。
たとえば──
- 経済は予測不能
- 為替は読めない
- 税制は変わる
- 家族構成も変わるかもしれない
- 自分の価値観も変わる
それでも人は、
「数字を細かくすれば安心できる」と思いがち。
でも現実はその逆で、
細かくするほど「揺らぐ未来」を量産してしまう。
じゃあ、どこまでやれば十分なのか?
結論はこれ。
“3段階”くらい見ておけば十分。
① 標準シナリオ(現実ベース)
「普通にいけばこうなりそう」という自分なりの基準ライン。
② 少し悪いケース
リターン控えめ、条件少し不利。冷静に考えて「まぁ起こり得るよね」レベル。
③ かなり悪いケース
ある程度大きな下振れを想定。「ここまで悪くてもなんとか戦える?」を見るためのもの。
このくらい見ておけば、
「最悪じゃなければ、だいたい戦える」
という感覚が持てれば十分。
シミュレーションより大事なこと
FIREの実践で本当に重要なのは、
- 年率が何%か?
- 何年後に達成できるか?
- 数十万円ズレるかどうか?
──だけではない。
それよりも大事なのは、
「修正可能な人生設計」になっているか。
たとえば、
- 途中で取り崩し率を下げられる?
- 生活費を少し調整できる?
- 少しだけ働くという選択肢がある?
- 生活スタイルを柔軟に動かせる設計になっている?
未来は「当てる」ものではなく、
「対応できるように設計する」もの。
シミュレーションは「安心材料」であってほしい
本来、シミュレーションは
- 不安を整理するため
- 現実感を持つため
- 安心して進むため
のツールであるべき。
なのに──
- 計算すればするほど怖くなる
- 完璧を求めて止まれなくなる
- 「永遠の準備期間」に入りがち
それは、
「未来の恐怖を自作している状態」。
“ある程度で止める勇気”が必要
FIREは、「完璧さ」を競う競技ではない。
ある程度まで整理できたら、
- 動いていい
- 試していい
- 実装していい
- 途中で修正していい
つまり、
「走りながら調整できる設計」にしておけばいい。
僕の感覚
僕の感覚では、FIREは「完璧な未来予測」を作る遊びではなく、
安心して進める未来設計を持つこと。
不安を減らして、
現実をちゃんと受け止めながら、
それでも前に進むための設計。
そのための道具として、
シミュレーションとは“ほどよい距離感”で付き合うのがちょうどいい。
まとめ
- シミュレーション沼にハマると逆に不安が増える
- 未来は完全には当てられない
- 標準・少し悪い・かなり悪いの3段階で十分
- 重要なのは「修正できる人生設計」
- 完璧ではなく“動ける設計”を目指す
FIREは計算の勝負ではなく、
現実と向き合いながら進んでいく「設計力」の勝負だと思っている。
次回は、支出実践編の続きとして、
固定費をどう見直すか? 住宅・通信・保険・車・サブスクをFIRE目線で考える回に進む予定。
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