「怒る」と「叱る」は違う、という誤解
「怒る」と「叱る」は違う、という人がいます。
「怒る」と「叱る」の違いは自分本位の行動か相手本位の行動かである、というのです。
「怒る」ことは感情をぶつけること、「叱る」ことは相手のためを思って口を出すことだと。
本当にそうなのでしょうか?
アンガーマネジメントの大家、安藤俊介さんは
『アンガーマネジメント 叱り方の教科書』の中で、
私は、「叱ること」と「怒ることを区別していません。同じものだと考えています。
とおっしゃっています。
怒ることと叱ることを、感情的かどうかという極めて主観的な判断で区別することは難しいと思います。
結局、「叱った」人が相手のためだと思っていたとしても、叱られた側は不満しかなく「怒られた」と感じるかもしれません。
そういったあいまいな区別の仕方をしても意味がありませんよね。
基本的には、「怒る」と「叱る」、さらには「注意する」も含めてすべて同じだと考えるべきです。
「怒る」と「叱る」の違いの言葉遊びをするよりも、より効果的で上手な「怒り方」「叱り方」を考えていきましょう。
「怒る」「叱る」「注意する」の目的は全て同じ
「怒る」「叱る」「注意する」ことの目的は、突き詰めれば、
「相手にこうしてほしいと伝えて、期待する行動をとってもらう」
ことです。
つまりどんな方法で怒ったり叱ったりしても、期待する結果が得られなければ、意味がないわけです。
ここが怒り下手な人が忘れがちな点です。
「怒る」「叱る」とは強くとがめることではありません。
いかに相手のモチベーションを高められるか、
そして求める結果を出せるかを問われるコミュニケーション能力の1つです。
ではどうすれば上手に怒ることができるでしょうか?
「怒る」こと自体は悪ではない
まず確認しておきたいのが、「怒る」こと自体は悪ではないということです。
怒りという感情自体は、自分の心身を守るために不可欠な防衛感情です。
自分の持っている「べき」という考えから、許容範囲を外れた行動をとる相手や状況から身や心を守るために発生します。
⇒参考にこちらの記事もどうぞ。
しかし怒りによって我を忘れたり、周囲に悪影響を及ぼしたりするので、適切に怒りの感情をコントロールする必要があります。
怒りの感情をコントロールして、相手に期待通りに動いてもらえれば、上手に怒れたということだと思います。
「怒る」「叱る」「注意する」時の鉄則
「次からどうしてほしい」かを伝えるリクエストがメイン
怒る一番の目的は「相手にこうしてほしいと伝えて、期待する行動をとってもらう」でした。
その観点で、次のような伝え方はNGです。
×「この資料だと意味がわからないよ。流れが不自然で理解しづらい。作り直して!」
これだとダメなところを指摘するばかりで、結局何をしていいかわかりません。
指摘を受けて、相手にどうしてほしいかを伝えることが大事です。
〇「この資料だと、~という意図が伝わらないね。この部分が論理が飛躍しているように感じるから、つなぎの理由付けをもう少し練ってみてほしい。」
こうすると、具体的に何について考えるべきかはっきりするので、次の作業に移りやすいですね。
また、もし作業に詰まっても論点が明確なので、上司に対する相談がしやすくなります。
サブとして、感情的にはならずに自分の気持ちを伝える
感情的に言葉を口走っても相手には届きません。
怒られる側にも防衛感情があり、怒っている人の言葉は天敵の言葉として、心の中に入ってくるのを阻止しようとするからです。
しかし、自分の気持ちを伝えることは、相手により深く自分の言葉を届けるのに有効です。
そこで、怒りの感情は抑えつつ、素直な気持ちを伝えるようにしましょう。
例えば、
×「遅刻するときは事前に連絡しろよ。当たり前だろ!」
と言ってしまっては、怒られたことばかりが心に残ってしまいます。
〇「遅刻するときは事前に連絡をしてね。周りが何かあったかと心配するよ。私も心配で仕事が手につかないし。」
と言ったほうが、次から心配させないように気を付けようと思いますよね。
ただし、自分の気持ちを伝える際にも、リクエストがメインとなるように気を付けましょう。
「怒り方」は知識と技術で変わる
怒り方は技術を学ぶことで変わります。
目的を意識したり、自分の怒り方に自覚的になれば、改善する方法が見えてくるからです。
僕自身、アンガーマネジメントの本を読んで勉強し始めてから、怒りを表に出すことが減りましたし、意味もなくイライラしていることが減ったと思っています。
また、自分の周囲の人の怒り方を見て、何がよくて何がよくないのかを観察していると、自分が怒られた際にも冷静になれます。
もし、自分が怒りっぽいと感じたり、上司や周囲の人の怒り方が嫌だなと感じるのであれば、一度アンガーマネジメントについて学んでみることをお勧めします。
こちらはさらっと読むのにおすすめです。
図解が多く、簡単な言葉で書かれていますので読みやすいですが、網羅的にアンガーマネジメントについて知識が深まります。
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